値上げへの抵抗感、進まない賃上げ、流動性の低い労働市場──。日本が抱える経営課題をどう解決すべきか。欧米だけでなく日本の企業経営にも精通する三菱ケミカルグループのジョンマーク・ギルソン社長が、日本企業と日本経済の浮揚に向けた鍵を説く。

ジョンマーク・ギルソン氏
ジョンマーク・ギルソン氏
三菱ケミカルグループ社長。1963年生まれ。89年米ダウコーニング入社。化学会社や投資ファンドを経て、2014年に食品や医療関連の素材を扱う仏ロケットCEO(最高経営責任者)。21年4月から現職。東レとダウコーニングの合弁会社時代の05~09年、日本に駐在していた。ベルギー出身。(写真:古立 康三)

2022年、日本の産業界は原材料価格などの上昇に苦しみましたが、三菱ケミカルグループは着々と値上げを進めてきました。その秘訣は。

ジョンマーク・ギルソン三菱ケミカルグループ社長(以下ギルソン氏):特にありません。会社としては社員に給与を払い、製品やサービスを顧客に届けなければならない。株主には配当を払う必要もあるので、利益は絶対に出さないといけないんです。価格転嫁しない選択肢はないという結論に至りました。

 顧客が価格転嫁を受け入れるのを拒むなら、他の会社から製品を買えます。もしそれで顧客がいなくなっても私(経営者)の問題だから大丈夫だ。だからこれ以上、価格転嫁をしないでいることはできないんだ、と世界各地の販売担当者に伝えました。

 増えたコストを価格に転嫁して、顧客も値上げする。最終消費者が支払う価格も上がりますが、会社は利益を上げているから社員の給与を上げられる。我々のところで値上げをしなければ、そうしたポジティブなループに入ることはできず、デフレになってしまいます。

転職者が出ない会社でいいのか

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