新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の出現で、コロナ禍の収束に向けた見通しの不透明感が増してきた。サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長は、この年末年始に感染拡大を抑え込むことの重要性を説く。欧米に比べて経済の回復が遅れる日本。米中の情勢が不安定な中、国の再始動には「政権安定」と「若手活躍」が欠かせないと新浪氏は指摘する。

<span class="fontBold">新浪剛史(にいなみ・たけし)氏</span><br> サントリーホールディングス社長<br>1959年神奈川県生まれ。81年三菱商事入社。91年米ハーバード大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。2002年ローソン社長CEO(最高経営責任者)。14年5月に会長に退き、10月に創業家出身者以外で初となるサントリーHDの社長に就任。18年5月から日本経済団体連合会審議員会副議長、20年6月から経済同友会副代表幹事、21年7月から米日カウンシル評議員会副会長を務める(写真:的野 弘路)
新浪剛史(にいなみ・たけし)氏
サントリーホールディングス社長
1959年神奈川県生まれ。81年三菱商事入社。91年米ハーバード大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。2002年ローソン社長CEO(最高経営責任者)。14年5月に会長に退き、10月に創業家出身者以外で初となるサントリーHDの社長に就任。18年5月から日本経済団体連合会審議員会副議長、20年6月から経済同友会副代表幹事、21年7月から米日カウンシル評議員会副会長を務める(写真:的野 弘路)

オミクロン型の世界的な流行で経済の先行きを予測するのが難しい状況になっています。2022年に日本が景気回復に向かうターニングポイントになりそうな注目すべき出来事はあるのでしょうか。

新浪剛史サントリーHD社長(以下、新浪氏):国内では新型コロナウイルス感染拡大の第6波を心配する声が上がっていますが、この年末年始にどれだけ抑え込めるかがカギとなるでしょう。

 先日、国際会議に出席するため京都を訪れたのですが、インバウンド(訪日外国人)がなくても人流が非常に増えている。20年の年末年始と違って一定以上の国民がワクチンを接種し、「ある程度はコロナを抑えられる」という安心感を持つようになったことの表れだと思います。22年はこの安心感をどれだけ大きなものにできるかに懸かっている。

 海外旅行を楽しむのはまだ難しい状況です。一方の国内旅行は、年末年始の感染拡大を抑え込めれば22年は相当な繰り越し需要が期待できる。これは現政権にとっても重要なポイントです。年末年始の感染拡大を抑えて安心感を大きくできれば、22年の国内需要の展望が開けるというのが私の印象です。

 当然、そのための環境整備が欠かせません。民間病院が協力する臨時医療施設といった新たな態勢の構築と、職域接種を中心としたワクチンのブースター接種が必要となるでしょう。

 1月から3月ごろまで乗り切れば、次の大きなポイントは7月に想定される参院選になります。参院選に向けてコロナ禍に対する安心感が広がっていれば、政治の安定にもつながるとみています。衆参でねじれが生じれば政治が不安定になり、中長期の政策が打ち出しにくくなる。参院選後に日本の将来に向けた政策を打ち出すためには、安定した政権が欠かせません。その実現が、欧米に比べて経済回復が相当に遅れた日本がキャッチアップする好機となるでしょう。

海外では2月に中国で開催される北京冬季オリンピック・パラリンピックの外交的ボイコットなどの動きが出ており、日本も選択を迫られそうです。

新浪氏:欧米諸国が表明した北京五輪・パラへの外交的ボイコットがどのような地政学的影響を与えるかは、読み解くのが難しい。日本の立ち位置としても非常に難しい課題となります。

 日本政府は「中国の人権問題はおかしい」とは指摘しにくい状況にあるのではないでしょうか。日本は相当に経済環境が悪いので、外交的ボイコットに対するマネジメントを慎重に考えなければなりません。

 海外、特に米国は22年11月に中間選挙があるという自国の課題から中国に圧力をかけたいと考えています。景気はアジアを中心に徐々に回復するとみられ、滞っていたサプライチェーンも22年の4月から6月ごろまでには落ち着くとみています。中国も北京五輪・パラ後には国境を開いてくるでしょう。日本にとって中国は隣国。経済安定のために重要な国であり、より密なコミュニケーションを取ることが必要でしょう。

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