医薬品の開発や製造を受託する事業を手掛けてきたシミックホールディングス。創業者の中村和男会長CEO(最高経営責任者)は、コロナ禍での日本のワクチンの開発や接種の動きをどう見たのか。ワクチン接種歴を管理するスマホアプリの提供に乗り出した背景には、医薬・ヘルスケア業界におけるどんな問題意識があったのか。

<span class="fontBold">中村和男(なかむら・かずお)氏</span><br />シミックホールディングス会長CEO(最高経営責任者)<br />1946年生まれ、甲府市出身。69年京都大学薬学部を卒業後、三共(現第一三共)に入社。高脂血症治療剤「メバロチン」の開発などを担当し、92年に医薬品開発受託機関(CRO)のシミックを起業。2012年に持ち株会社制に移行し、シミックホールディングス会長兼社長CEO。18年より現職。
中村和男(なかむら・かずお)氏
シミックホールディングス会長CEO(最高経営責任者)
1946年生まれ、甲府市出身。69年京都大学薬学部を卒業後、三共(現第一三共)に入社。高脂血症治療剤「メバロチン」の開発などを担当し、92年に医薬品開発受託機関(CRO)のシミックを起業。2012年に持ち株会社制に移行し、シミックホールディングス会長兼社長CEO。18年より現職。

医薬品の臨床試験などを支援する医薬品開発受託機関(CRO)のシミックを1992年に創業し、医薬品の販売や開発製造の受託などに事業を広げてきました。医薬品にずっと関わってきた立場から、今回のコロナ禍をどのように見ていますか。

中村和男・シミックホールディングス会長CEO(以下、中村氏):シミックは創業から30年を迎え、現在では、日本で承認を取得した新薬の約80%に何らかの形で関与しています。具体的には言えないのですが、新型コロナウイルス感染症の薬剤・ワクチンの様々な治験・供給にも関わっています。

 今回のコロナ禍は、今後の日本の医薬・ヘルスケア業界を大きく変貌させる契機になるでしょう。

 新型コロナのワクチン接種は、これまでの新薬の製造販売承認、薬価決定、供給・販売、治療、そして長期的安全性のフォローという流れを大きく変化させました。製薬会社が製造販売承認を申請する前の段階から国が直接販売交渉を行い、買い上げるという異例の順序でした。そして、ワクチンを国から配布された自治体が主体となって住民への接種を実施しました。これまでとはステークホルダーが一変したのです。ウィズコロナの新たな事業環境の中、医療・ヘルスケア業界の変化はさらに加速するはずです。

シミックの関わり方も変わったのですか。

中村氏:先ほど申し上げたようにシミックは今回のコロナ禍で薬剤・ワクチンの開発・供給に関わりましたが、それ以外にも貢献できることはないかと考え、ワクチン接種支援に取り組みました。

 シミックグループにはヘルスケアの様々なバリューチェーンに携わる社員が8000人近くいます。ちょうど、ヘルスケア領域の大きな変化に機動的に対応できるよう社内で「ヘルスケアプロフェッショナル」の研修・認定制度を走らせ始めたところでしたので、ワクチン接種支援もすぐに始められました。以前から多くの地方自治体の方々と地域のヘルスケアについて議論を進めてきた背景もあり、35市町村のワクチン接種を支援しました。

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