世界に先駆けて少子高齢化が進み、経済が長期停滞から抜け出せず課題先進国と称されて久しい日本。政治改革や財政・社会保障、人口減少など先送りされてきた重要課題について合意形成や世論喚起に取り組む「令和国民会議(令和臨調)」が発足し、議論を始めている。年明け以降は与野党の国会議員も参加し、本格的な検討が進む見通しだ。共同代表を務める増田寛也日本郵政社長に今後の議論のポイントを聞いた。

改めて、今年6月に「令和国民会議(令和臨調)」を立ち上げた経緯について教えてください。
増田寛也・日本郵政社長(以下、増田氏):令和臨調は1990年代に民間有志が参加して選挙制度や政治資金制度の改革を訴えた「政治改革推進協議会」(民間政治臨調)の令和版の位置づけとなります。民間政治臨調の取り組みは小選挙区比例代表並立制の導入や政治資金改革などにつながりました。
民間政治臨調はその後「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)に衣替えし、内閣主導の政策決定や政権公約(マニフェスト)の導入などを推進しました。私はこの21世紀臨調から政治改革論議に参加するようになったのですが、私自身、岩手県知事選でマニフェストを掲げて臨んだ経験があります。
その後、2009年の民主党による政権交代を経て21世紀臨調は活動休止状態でした。ところが、この間に世界では「GAFA」と呼ばれる米巨大IT(情報技術)企業に利益やデータが集中するなど経済社会の姿が大きく変わり、富の偏在や経済格差の拡大が問題視されています。社会の不安に乗じてポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭し、新型コロナウイルスの感染拡大は国内外の分断や政治の危機を顕在化させました。
日本に目を移すと、世界に先駆けて少子高齢化が進み、経済は長期停滞から抜け出せず、財政赤字は積み上がり、相対的な地盤沈下は著しいものがあります。有権者から負託を受けた政治家が腰を据えて取り組むべき課題が山積しているというのに、政治や政治家への信頼感は大きく低下し、国会論議も低調なままです。このままでは日本でもポピュリズム的要素が強まり、日本社会と民主主義は危機的な事態を招きかねません。
「党派を超えた場づくり」を急ぐ
増田氏:取り返しがつかなくなる前に平成の時代以来先送りされてきた課題について、党派を超えて取り組んでいくための場づくりを急ぐべきだ──。昨年の春頃から茂木友三郎・キッコーマン名誉会長と佐々木毅・元東京大学総長が中心になってもう一度民間が引っ張る形で改革に取り組む臨調方式を発足させようという機運が高まり、私も賛同してお手伝いすることになりました。
茂木さん、小林喜光・東京電力ホールディングス会長、佐々木さん、私の4人が共同代表となり、経済界や労働界、学識者などのメンバーで議論を始めています。民間が引っ張る形で政治改革に取り組む臨調の試みは3度目ということになります。
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