コロナ禍が子ども社会の醜い一面をあぶり出した。文部科学省によると、パソコンやスマートフォンを使った誹謗(ひぼう)中傷などの「ネットいじめ」が2020年度に過去最高を記録した。コロナ禍で外出や登校が制限されたことにより、家でインターネットに向かう時間が増えたことが一因と考えられる。ネットでの誹謗中傷を苦にした子どもの自殺まで発生した。日本のサイバー犯罪捜査の草分けである元京都府警察官で、現在はNECのサイバーセキュリティ戦略本部エグゼクティブ・ディレクターを務める木村公也氏に対処法を聞いた。

<span class="fontBold">木村 公也[きむら・きみや]氏</span><br />1957年、京都府生まれ。80年に京都府警に入り、警察官となる。2年半の交番勤務を経て生活安全部に移り、退官するまで所属する。当初は薬物犯罪などの捜査を担当し、92年からサイバー犯罪捜査を手掛ける。日本のみならず、世界的に見ても早い段階でサイバー犯罪捜査に乗り出した。2017年に退官。現在はNECサイバーセキュリティ戦略本部や日本サイバー犯罪対策センター(JC3)に籍を置き、IT(情報技術)などの面で警察のサイバー犯罪捜査を支援している。
木村 公也[きむら・きみや]氏
1957年、京都府生まれ。80年に京都府警に入り、警察官となる。2年半の交番勤務を経て生活安全部に移り、退官するまで所属する。当初は薬物犯罪などの捜査を担当し、92年からサイバー犯罪捜査を手掛ける。日本のみならず、世界的に見ても早い段階でサイバー犯罪捜査に乗り出した。2017年に退官。現在はNECサイバーセキュリティ戦略本部や日本サイバー犯罪対策センター(JC3)に籍を置き、IT(情報技術)などの面で警察のサイバー犯罪捜査を支援している。

小中学校が認知したネットいじめの件数が昨年度、過去最高となったそうです。子どもがネットいじめの加害者にならないようにするには、保護者はどうすればよいですか?

ネットはクルマの運転ぐらい危険

木村公也氏(以下、木村氏):インスタグラムやワッツアップなどの新たなSNS(交流サイト)が次々と登場し、親の知識が追いついていません。SNSの詳しい機能まで知る必要はありませんが、子どもがいじめの加害者にならないよう、「他人を中傷した書き込みがコピーされ、ネットで広まれば被害者は長い間苦しむことになる」といった深刻さを教えておくべきでしょう。

 また犯罪の被害者にならないためにも、「自分の住所をネットで公開したら、悪い人に悪用される恐れがある」などと伝えるべきです。ネットの世界はクルマを運転するのと同じぐらい危険であり、加害者にも被害者にもなり得るということを、子どもたちに自覚してもらう必要があります。

ネットでの誹謗中傷を警察がもっと積極的に取り締まることも、ネットいじめの抑止力になるのではないでしょうか。

木村氏:ネットでの誹謗中傷には、どこからが犯罪なのかという線をきっちり引けないという難しさがあります。警察では、違法なのかの判断がつきにくい案件を、口の中に砂が入った気持ちの悪い感覚になぞらえて「ジャリジャリしている」と表現します。当然ながら明確に違法だとは言えなくても、モラル違反やエチケット違反と呼べる行為は控えなければなりません。

 しかし残念ながら違法でなければ何をやってもいいという風潮が一部にあります。私が現職警察官だった頃も、ネットに書かれた内容について、投稿者本人が通報者を装って「これは違法ですか?」などと問い合わせてくるケースが多くありました。違法にならないギリギリの線を見極めるためです。

 そんな気持ちで投稿を繰り返していると、中傷した相手を死に追い込みかねません。昨年、ネットで中傷された女子プロレスラーが自ら命を絶った一件が大きく報じられました。ネットには他人を死に至らしめる威力があるのだという理解がようやく一般に広がり、世の中が動き出したという印象です。私が現役だった頃は刑事部の刑事から「サイバー犯罪で人は死なない」などと誤解され、軽くみられていたものです。

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