民主主義は命懸け

真山さんは小説のためにミャンマーでも多くの政治家に取材をしましたが、その取材の中で何を感じましたか。

真山氏:民主主義が命懸けで手に入れるものだと世界で一番知らないのは日本人です。なぜなら、民主主義を勝ち取ったことがないからです。明治維新は封建社会からの脱皮ではなく、単に江戸幕府が倒れただけ。その後、薩長土肥による幕府を近代化したような政府があったものの、戦後にGHQ(連合国軍総司令部)が入ってきて民主化しました。自分たちが革命を起こして手に入れたものではなく、上から降ってきた民主主義が発端なので、日本では民主主義という言葉が浮ついています。

 ミャンマーに行ったのは、本来、民主主義は命懸けで手に入れるものだと肌で感じたかったからです。民主派活動家を数人取材しましたが、中には何十年も投獄されていた人もいます。それは手や腕の状態を見ると分かります。それでも彼らはまだ活動し続けています。

そもそもなぜ民主主義が重要なのでしょうか。

真山氏:基本的人権を守り、富や国民の命を独裁者に勝手にもてあそばれるのを防ぐためです。また、人々が自らの社会に責任を持つためでもあります。民主主義でなければ、人権侵害、言論弾圧、虐殺、富の独占、機会の不平等などが起きますし、国民が問題提起をしても、それをどう扱うかは独裁者の裁量に委ねられてしまうのも問題でしょう。

次ページ 多様性の中で求められる民主主義