岸田文雄政権が新たに設けた「経済安全保障担当大臣」に就任した小林鷹之氏に聞いた。大臣として最も重視するのは「基軸をつくること」。経済安全保障で目指すのは「我が国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」。これを実現するには、米国や中国など大国の動きに左右されない基軸が必要となる。

(聞き手:森 永輔)

新型コロナ危機で日本経済の脆弱性が明らかになった(写真:アフロ)
新型コロナ危機で日本経済の脆弱性が明らかになった(写真:アフロ)

経済安全保障担当大臣として、最も重視していることは何ですか。

小林鷹之・経済安全保障担当大臣(以下、小林):日本が経済安全保障政策に向き合うときの基軸となる考えをしっかりと持つことです。これが最も重要。

<span class="fontBold">小林鷹之(こばやし・たかゆき)</span><br />経済安全保障担当大臣。1974年生まれ。1999年、東京大学法学部を卒業し、大蔵省(現財務省)に入省。理財局、在米国日本大使館への出向を経て、2010年に退職。この間、米ハーバード大学ケネディ行政大学院で公共政策学修士を取得。2012年に衆院議員に当選。防衛大臣政務官、党新国際秩序創造戦略本部事務局長などを務めてきた。(写真:加藤康、以下同)
小林鷹之(こばやし・たかゆき)
経済安全保障担当大臣。1974年生まれ。1999年、東京大学法学部を卒業し、大蔵省(現財務省)に入省。理財局、在米国日本大使館への出向を経て、2010年に退職。この間、米ハーバード大学ケネディ行政大学院で公共政策学修士を取得。2012年に衆院議員に当選。防衛大臣政務官、党新国際秩序創造戦略本部事務局長などを務めてきた。(写真:加藤康、以下同)

 経済安全保障の分野では米国、中国、EU(欧州連合)などさまざまなプレーヤーが激烈な競争を展開しています。基軸をしっかりしておかないと、例えば「米国が○○したから、日本も□□する」といった追随になりかねません。

 2020年12月に、私も関わって、自民党が「提言 『経済安全保障戦略』の策定に向けて」をまとめました。ここで経済安全保障を「わが国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と定義しました。担当大臣として、この視点を踏まえて政策を進めていきたいと思います。

日本の国益を踏まえて政策を判断する基軸を整える

経済安全保障に関わる日本の政策は、そもそも追随で始まった印象があります。例えば、外為法(外国為替及び外国貿易法)の改正。事の発端は、トランプ米政権(当時)が中国に対し追加関税措置を講じるなど、貿易や投資の分野で同国に厳しい姿勢を取り始めたことでした。経済産業省が「第2の東芝機械ココム事件が起きかねない」との危機感を高め、省庁横断の協議が始まりました。

 今でも、例えば米国が半導体をめぐる対中制裁の方針を変えたならば、日本企業が2次制裁の対象になる事態が生じるかもしれません。足元では、日本メーカーによる半導体製造装置の対中輸出が大きく伸びています。2021年1~6月期の対中輸出金額は約6650億円で前年同期比38.5%増を記録しました。ここに制裁の影響が及べば、企業は大きなダメージを受けることになります。

 経済安全保障は、やはり米国や中国など大国の動向に左右されるのではないでしょうか。

小林:もちろん大国の動向を注視する必要はあります。日本の行動を決める上での重要な変数ですから。私がいう基軸は、こうした変数を入れて、取るべき道を判断するための方程式です。日本が持つ強みと弱みをしっかり把握し、日本の国益の視点から判断するための方程式。

 この方程式をつくるに当たって、基本的価値やルールに基づく国際秩序の下で、同志国との協力を拡大することももちろん前提となります。

 この基軸に基づいて、①自律性と②不可欠性を確保し、これらをてこに③国際ルールの形成に主体的に参画すべきだと考えます。11月19日に開かれた経済安全保障に関わる閣僚会議(編集部注:経済安全保障推進会議)でこの3つを打ち出しました。

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