日々の生活で見かけない日はなく、人々の暮らしに貢献してきた石油化学製品は、「脱炭素」機運の高まりで一気に悪者扱いされるようになった。当事者である化学メーカーは事業構造の転換を迫られ、最大手の三菱ケミカルホールディングス(HD)は石化・炭素事業を切り離す決断を下した。グループの中核事業会社、三菱ケミカルの社長で、石油化学工業協会の会長でもある和賀昌之氏は、脱炭素を進める上では水素の活用こそが切り札だと説く。
連載の(上)はこちら『三菱ケミカルHD社長、歴史からの「方向転換」 石化・炭素を分離』

三菱ケミカル社長 1958年生まれ。81年慶應義塾大学経済学部卒、三菱化成工業(現・三菱ケミカル)入社。三菱化学(現・三菱ケミカル)執行役員機能化学本部長、三菱ケミカル常務執行役員情電・ディスプレイ部門長などを経て、2018年から現職。20年7月から石油化学工業協会会長を務める。東京都出身。
化学業界にとって「脱炭素」が大きな課題として浮上しました。
和賀昌之社長(以下、和賀氏):ええ、もう真正面から取り組むしかない。我々はここから逃げることは絶対にできないし、そもそも逃げるつもりもありません。
産業史的に言うと、化学がある程度、二酸化炭素(CO2)の排出側で、環境負荷を増大させた産業の一つであることは事実です。同時に、いろいろなプラスチックや化学品を世に送り出し、モノの軽量化で自動車の燃費を高めるなどエネルギーセーブ側にも貢献しています。
ただ、モノを作るときに燃焼させるとか、高温状態に上げる「高温高圧反応」がかなり多く不可避である以上、排出側が大きくなる。これを何とかしないといけません。
具体策としては、我々が使っているエネルギーを順次転換していきます。液化天然ガス(LNG)にしたり、ボイラーを変更したり。エネルギー効率の一段の向上や、再生可能エネルギーの調達・購入も必要でしょう。
社内的には2022年4月からカーボンプライシング(温暖化ガス排出への価格付け)を参考指標の一つとして導入し、自分たちが排出しているものは徹底的に抑制する。環境負荷を考えて投資するというように、経営の考え方も変えていきます。
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