2020年4月、新型コロナウイルス禍に苦しんでいたANAホールディングス(HD)からスピンアウトしたavatarin(アバターイン、東京・中央)は、アバター技術を使ってバーチャルな“瞬間移動”を実現しようと技術開発を進めている。ANAHD時代からプロジェクトを指揮してきた深堀昂CEO(最高経営責任者)はアバターについて、リモートコミュニケーションツールではなく、コロナ後も使われ続ける移動の社会インフラになると話す。

<span class="fontBold">深堀 昂[ふかぼり・あきら]氏</span><br />2008年にANAに入社。パイロット訓練プログラムの立ち上げを担当するかたわら、社会起業家のフライト代を支援する「BLUE WINGプログラム」を発案。14年よりマーケティング部門に異動し、16年にはアバターロボットを活用して社会課題解決を図るコンセプトを発表する。18年にアバタープロジェクトをスタートさせ、19年にはアバター事業化を推進する組織「アバター準備室」を立ち上げる。20年4月にavatarinを創業して現職。(写真:古立康三)
深堀 昂[ふかぼり・あきら]氏
2008年にANAに入社。パイロット訓練プログラムの立ち上げを担当するかたわら、社会起業家のフライト代を支援する「BLUE WINGプログラム」を発案。14年よりマーケティング部門に異動し、16年にはアバターロボットを活用して社会課題解決を図るコンセプトを発表する。18年にアバタープロジェクトをスタートさせ、19年にはアバター事業化を推進する組織「アバター準備室」を立ち上げる。20年4月にavatarinを創業して現職。(写真:古立康三)

移動需要が急減する中でアバター事業がスタートしました。

深堀昂CEO(以下、深堀氏):20年の4月はまさにパンデミックの状況でしたから、病院などから具体的な依頼がものすごく入りました。我々のアバターロボット「newme(ニューミー)」のプロトタイプモデル約300台を有料で貸し出し、実証しながら量産モデルとサービスアプリケーションを作ってきた1年半でした。ユースケース(実例)が、コロナ禍によってすごく増えたのは事実です。

 ただ、コロナ禍に対応するために会社を発足させたわけではありません。

 もともと移動というものに限界を感じ、アバターという「意識」と「存在」だけを伝送する新しいモビリティー(移動手段)を既存のモビリティーと組み合わせることで、これまで以上に人類が色々な所に行けるようになると考えていました。移動の拡張を念頭に置いているのです。

あえて付けた無駄な機能

ニューミーはどんなロボットですか。

深堀氏:遠隔操作で自由に移動させられます。そして、ディスプレーが付いていて自分の顔が画面に映し出されます。これでオフィス内を移動していると、周囲の人から話しかけられることが多いんですよ。ディスプレーに映し出された顔を見れば誰がアバターに入っているか分かるので、その人の名前で呼んでもらえる。

 ニューミーにはディスプレーを上下に動かす首振り機能を付けています。アバターに入っている人が、上を見ているのか、下を見ているのかが、周囲の人から分かりやすいように、一見無駄と見える機能をあえて付けている。そうやって存在感を出すようにしています。

企業ではリモートワークによるコミュニケーション不足を懸念する声もありますよね。

深堀氏:ニューミーはそこにいるのと同じように使えるので、オフィスで雑談も普通に始まります。我々の中には米シリコンバレーからアバターに入って働いている仲間もいます。オフィスをウロウロするのが重要ですね。

 面白い例としては、ある学会にニューミーを貸し出したことがあります。学会のために何百万円も払って年1回集まるのは、講演を聴くためではない。それならオンライン配信でいいのです。重要なのは、その後のパーティーで研究者たちが出会って、共同研究が生まれたりすること。それがコロナ禍で難しくなったので、ニューミーでコミュニケーションをしたいという要望でした。

“行動範囲”が広がる

いつかはコロナが収束し、リアルな移動がある程度戻ってきます。それでもアバターによるバーチャルな移動方法は使われるでしょうか。

深堀氏:私はこの技術を「サステナブル(持続的)でインクルーシブ(包括的)でインスタントの移動手段」と言っています。

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