スポーツで健康寿命の延伸も

(写真:北山宏一)
(写真:北山宏一)

「人生100年時代」といわれますし、スポーツを楽しむことで健康寿命の延伸も期待できそうですね。

室伏氏:そうですね。高齢化社会で大切なのは「自分自身にオーナーシップを持ってライフスタイルを切り開くこと」だと思います。スポーツは身体に限らず心の健康にも寄与できます。私は「からだ」と漢字で書くときに「体」ではなく「身体」と表記します。前者は「肉体」を指し、後者は「心身」を表していると考えているからです。昨今は体だけを鍛える風潮が強いですが、スポーツは本来、心と体を両方をたくましくし、健康を向上させることができるのです。

 人間には元来、素晴らしい能力が備わっているのです。自然の中で生活するある部族は研ぎ澄まされた身体感覚を持っており、食べられるものを見分ける能力が優れています。例えば、森の中にいる動物の居場所や種類などを、足跡などわずかな情報から知ることができるそうです。こうした野性的な能力は現代では必要とされないかもしれませんが、身体能力は使わないと衰えていきます。現代に生きる私たちも、スポーツの種々の動作から身体の使い方を学ぶことが大切です。

 コロナ禍で家に閉じこもりがちになり、運動の機会が減った人は多いでしょう。そうすれば精神的にもまいってしまう。スポーツがライフスタイルとなっていれば、運動が習慣化しているため、体力が維持されることでしょう。体力は大切です。それは私のようなスポーツ選手に限りませんよ(笑)。日本では大きな災害も増えています。都市部に暮らしていても停電でエレベーターが使えなくなれば自分の足が頼りです。そして体力があれば高齢者や子どもを助けることもできる。当然、年配の方の体力の維持増進も重要になります。

 あらゆる年齢層でスポーツをライフスタイルとして楽しむことができれば、日本の活力は増すでしょうね。

スポーツの浸透にはビジネスとして収益を上げるモデルの構築も必要かと思います。米国では大学スポーツもビジネス化しており、その収益を施設整備や選手獲得に使っていると聞きます。日本ではスポーツ普及は教育の側面が強いと感じますが、お金をうまく回す仕組みづくりはどのように考えていますか。

室伏氏:確かに「する」スポーツにはお金がかかります。遠征費や用具、講習料などアスリートを育成するためにはビジネスの観点が必要なのは事実です。スポーツ庁ではスポーツビジネスの可能性を広く周知するため、スポーツの成長産業化の実現を促すべく、民間企業の力を活用した「スポーツオープンイノベーション」を推進しています。そこではスタジアムやアリーナの改革、地域の指導者を主体としたスポーツエコシステムの構築を積極的に進めています。

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