2021年4月にソフトバンクの社長となった宮川潤一氏が、就任後初めてメディアの単独インタビューに応じた。社長就任に際し、通信会社から「総合デジタルプラットフォーマー」への変革を目指すと掲げた宮川氏。法人ソリューション事業などを通じて、企業や自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める構想だが、現状では世界と比べて大幅に遅れていると危機感を募らせている。人材育成や高齢者のデジタルデバイド(情報格差)など山積する課題について語った。

<span class="fontBold">宮川 潤一(みやかわ・じゅんいち)氏</span><br>1991年にインターネット接続会社を起業後、同社の買収により2002年に現ソフトバンクに入社。06年にCTO(最高技術責任者)に就任して、テクノロジー領域の事業統括責任者を務める。14年から17年まで、ソフトバンクが買収した米スプリント(現・TモバイルUS)に赴任し、事業の立て直しに奔走。18年に帰任してソフトバンク副社長兼CTOとなり、21年4月より社長兼CEO(最高経営責任者)。(写真:的野弘路)
宮川 潤一(みやかわ・じゅんいち)氏
1991年にインターネット接続会社を起業後、同社の買収により2002年に現ソフトバンクに入社。06年にCTO(最高技術責任者)に就任して、テクノロジー領域の事業統括責任者を務める。14年から17年まで、ソフトバンクが買収した米スプリント(現・TモバイルUS)に赴任し、事業の立て直しに奔走。18年に帰任してソフトバンク副社長兼CTOとなり、21年4月より社長兼CEO(最高経営責任者)。(写真:的野弘路)

21年8月の決算会見で「日本がデジタル化で遅れていることについて危惧している」と発言されました。

宮川潤一ソフトバンク社長(以下、宮川氏):(スイスのビジネススクールIMDがまとめた)「世界デジタル競争力ランキング」を見てください。17年と21年を比較すると、中国は31位から15位へ、韓国は19位から12位へと上がっていますが、日本は27位から28位へと横ばい。日本はずっと遅れているんです。

 なぜ日本が遅れているかというと、投資をしてこなかったからです。名目GDP(国内総生産)とデジタル投資額を日米で比較したグラフがすごく面白い。相関関係がそのまま出ています。政府もデジタルではなく、自動車産業に投資してきました。もともと強い自動車産業を後押しして、1本足打法で何とか日本の経済を復活させようとしてきたけれども、結局はお金の使い道を間違えていたのでしょう。

出所:ソフトバンク
出所:ソフトバンク
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 世界の企業の時価総額ランキングでトップ50に入っているのは、今やトヨタ1社だけ。時価総額が大きいから偉いというわけではないけれど、(米国の)デジタルの会社が上位を占めています。世界的に評価されている会社と、日本が狙っていた分野は全く違っていたということでしょうね。ランキングに入ってないソフトバンクが偉そうに言える話ではないのですが。

 今、日本では盛んにDXをやるぞと言っていますが、実際には、「デジタル化」「デジタライゼーション」「DX」という順番があります。DXを語る前に、日本の企業はまだアナログの書類をまずデータ化するというデジタル化の段階にも至っていない。ソフトバンクだって10年ぐらい前はそうでした。我々はまずコピー機を全部捨ててペーパーレス化し、会議室にプロジェクターとスピーカーを置いて、テレワークができるようにしました。まずは道具を与えたわけですよ。でも、それをDXとは言わない。

 DXをやる下地としてのデジタル化です。今、日本はまだこれを一生懸命やっているタイミングです。日本は中小企業が多いので、彼らがDXに本当に取り組むなら、1社1社をデジタル化するところから始めなければいけない。我々は今、そこに汗をかいているんですよ。

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