グローバル化、デジタル化という世界の変化に乗り遅れてきた日本企業に、「脱炭素」というパラダイムシフトの荒波まで押し寄せている。日本企業は、日本人は、自分たちの強みをどう定義し直し、脱炭素時代を生き抜いていけばよいのか。企業再生・産業再生のプロで、希代の論客でもある冨山和彦氏は、「むしろチャンスだ」と語る。その真意とは。

<span class="fontBold">冨山和彦(とやま・かずひこ)氏</span><br />ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、2003年に産業再生機構の最高執行責任者(COO)に就任。機構が解散した07年に企業の成長・再生支援を手がける経営共創基盤(IGPI)を設立し最高経営責任者(CEO)に就く。20年10月からIGPIグループ会長。20年に地方創生のための投資・事業経営会社、日本共創プラットフォーム(JPiX)を設立。パナソニックの社外取締役も務める。政府関連委員を多数歴任。
冨山和彦(とやま・かずひこ)氏
ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、2003年に産業再生機構の最高執行責任者(COO)に就任。機構が解散した07年に企業の成長・再生支援を手がける経営共創基盤(IGPI)を設立し最高経営責任者(CEO)に就く。20年10月からIGPIグループ会長。20年に地方創生のための投資・事業経営会社、日本共創プラットフォーム(JPiX)を設立。パナソニックの社外取締役も務める。政府関連委員を多数歴任。

グローバル化、デジタル化という大きな変化のうねりを経て、今、世界は「脱炭素時代」ともいうべき大変革期に突入しています。新たな国際競争の中で日本が勝ち残っていくためには、何が重要だと思いますか。

冨山和彦氏(以下、冨山氏):まず脱炭素に対する基本認識として、2つ押さえておく必要があります。1つは、環境変化の波を受けているという点で、みんな条件は一緒だということです。特定の国や企業にもたらされた変化ではなく、世界のすべての国や企業が対応しなければならない問題です。2つ目は、日本や日本企業がその変化に適応するか、しないか、というシンプルな問いを突きつけられているということです。

 日本にとって構造的に有利か不利かを論じる以前に、適応できた人にとっては有利だし、できない人には不利になる、というだけの話で、企業にとっては顧客の嗜好が変化するということと、本質は一緒だと思います。

競争条件の変化に対応できるかどうかの勝負、ということですね。

冨山氏:そうです。この「変化できるか」という点が、日本の企業や人にとって大きなハードルになるわけです。時間軸をどう設定するかによって、変化の「破壊性」は変わるわけですが、今後20~30年かけてカーボンニュートラル(炭素中立)を実現するという、不連続の大きな変化が始まっている。様々な規制や制度が今後出てきて競争条件も変わる。これ自体は、日本にとってチャンスといえます。

日本は負けてきたからこそ、今がチャンス

なぜチャンスなのでしょうか。

冨山氏:日本は2連敗中だからです。日本企業は「グローバル革命」と「デジタル革命」という2つの不連続な変化に対して、今のところ負け組です。だから都合よく抽象化して言ってしまうと、ここでまた違うタイプの不連続な大変化が起きてくれたのは、巻き返すチャンスが到来したということでもあるんですよ。その上で、日本には比較優位がある。

 1970年に米国で成立したマスキー法(当時、世界で最も厳しかった自動車の排ガス規制)に初めて対応できたのは、省エネ性にも優れたホンダのCVCCエンジンでした。これには日本の地政学的な優位性があった。脱炭素革命は、エネルギー革命でもあります。ところが日本は幸か不幸か、エネルギー大国でもなければ、排ガスによる汚染をある程度許容できるような広大な国土もない。だからこそ技術が発達したわけです。

 ただし、ここで昭和的な大量生産を前提とした加工貿易立国モデルにしがみついたら、3連敗の大負けになってしまいます。エネルギー多消費型の産業形態になりますし、何よりもう、もうからない。日本の年収4万ドル以上の賃金水準は、この先維持できないことが見えています。

 平たく言えば、付加価値率が高い商売にシフトするということです。エネルギーとコストを使って価値の薄いものを大量生産するのをやめて、分厚い付加価値で勝負する。消費エネルギー当たりの価値を大きくする、と言い換えることもできます。

続きを読む 2/3 「人口小国」モデルに転換するとき

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