では、こうした変化のもとで、どんな戦略をとることが大事でしょう。特に優先度の高いものをそれぞれ3つほど挙げてもらえますか。

内田氏:方向性としては、「目指す方向の再設定(をする)」「DX(デジタルトランスフォーメンション)」「強じんな経営基盤(をつくる)」の3つに整理できます。さらに、3つの方向性それぞれにいくつかのアクションが含まれると考えています

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秋池氏:これらのうち、私は日本企業にとっての1つの着眼点は、まずは価格の付け方(13)だと思います。競争環境が厳しいなかで、価格で戦ってしまう。みなが値引きをすることで、みなの業績が苦しくなれば企業価値の低下につながりますし、世界を相手としたときの競争力も弱まります。

 不当な値付けはよくないですが、企業として持続可能な形で優れたサービスを顧客に提供できる状態をつくることは大切です。付加価値が従業員に配分され経済が回っていくことも、将来への希望につながる大切なことだと思います。

 日本企業はカスタマイズして優れたものを作るのは得意ですが、受け手にとってその価値が何なのかについて考えるのは必ずしも得手ではないように思います。お客様に寄り添うのが日本企業の良さですが、その適正な対価については改めて考えていかなければならないでしょう。

 もう1つはシナリオプランニング(2)です。世の中の振れ幅が大きくなっていて、例えばグローバルの上位25%と下位25%の企業の間では業績の差がますます開いています。技術のイノベーションやグローバル化が進み、お金の流れも激しくなり、自然災害やコロナ禍など思いもかけないことが起きるようになってきています。想像力を最大限働かせて、何が起きたらどう行動するのか、考えておくことが大事です。

 特に、経営陣がいざという時の対処についてあらかじめ合意しておくことが重要です。何かが起こったとき、すぐに一枚岩となって動けなかったりすると手遅れになる可能性があります。このようなことが起こったらこうする、と、あらかじめ切り替える戦略を決めておいたり、関連する数字や事象を定点観測しておいて、これが起きたらこちらのシナリオ、こちらの戦略に切り替える、という練習をしておいたりすることが大切です。基本的なことですが、意外にできていないのではないでしょうか。

 3つ目は、伝統的な手法ですが経営資源の配分です。特定の事業を成功させようとするのであれば薄く広く資源配分していてはダメで、成功する水準まで十分配分することが必要です。