低成長にあえぐ日本企業。収益力の物差しである自己資本利益率(ROE)は欧米勢に見劣りし、実質賃金も先進国の中で唯一上がっていない。収益性や企業価値の向上、働き手の幸せなどを同時に実現するにはどんなコーポレートガバナンス(企業統治)が必要なのか。経営者、従業員、株主が皆で豊かになる「三位一体経営」を唱え、自らを「働く株主」と称する投資会社、みさき投資(東京・港)の中神康議社長に聞いた。

<span class="fontBold">中神康議(なかがみ・やすのり)氏</span><br>1964年神奈川県生まれ。86年アーサー・アンダーセン・アンド・カンパニー(現アクセンチュア)入社、コンサルタントに。91年から独立系のコーポレイトディレクション(CDI)のパートナーとなり、計20年弱にわたり幅広い業種で経営コンサルティングに従事。2013年にみさきコンサルティング(現みさき投資)を立ち上げた。コンサルの実体験をもとに「働く株主」を標榜。長期投資に軸足を置き、多くの成功事例を生んでいる。21年3月時点の預かり資産は約1247億円と15年比26倍に増やしている。
中神康議(なかがみ・やすのり)氏
1964年神奈川県生まれ。86年アーサー・アンダーセン・アンド・カンパニー(現アクセンチュア)入社、コンサルタントに。91年から独立系のコーポレイトディレクション(CDI)のパートナーとなり、計20年弱にわたり幅広い業種で経営コンサルティングに従事。2013年にみさきコンサルティング(現みさき投資)を立ち上げた。コンサルの実体験をもとに「働く株主」を標榜。長期投資に軸足を置き、多くの成功事例を生んでいる。21年3月時点の預かり資産は約1247億円と15年比26倍に増やしている。

株主利益の追求にとどまらない「ステークホルダー(利害関係者)資本主義」という考え方が広がっています。日本企業のステークホルダーは皆が豊かになっていると思いますか?

中神康議氏(以下、中神氏):豊かになっていない。皆が豊かになる原資である日本企業の資本生産性は低いままだ。経営者の役割はヒト・モノ・カネの経営資源を調達し、利益を上げ、従業員に気持ちよく働いてもらうことだろう。当然ながら、経営者は株式市場や金融機関からお金を調達して経営しているので、そのインプット(資本コスト)を上回るアウトプット(資本生産性)を出すことが求められる。

 しかし、この10年、東証1部上場企業の半数は資本生産性の代表指標であるROEが、一般的な株主資本コストである8%を上回っていない。これでは投資家だけでなく従業員も豊かになれるはずがない。資本生産性から資本コストを引いたものを「超過利潤」というが、これを引き上げなければ成長も豊かさもない。

どうすればよいのでしょう?

従業員にキャピタルゲインを

中神氏:日本の経営は経営者と従業員の二人三脚という時代が長かったにもかかわらず、従業員が自社株式を持っている会社は少ない。上場企業は9割近くが持ち株会の制度を導入しているが、従業員保有比率は平均で1~2%程度とみられ、米国はおろかフランスの4%と比べても低い。三位一体経営ではまず、従業員が自社株を持つことが第1ステップだ。

 残念ながら、競争が激しいこの時代に、賃金や賞与をどんどん引き上げられる企業は極めてまれだ。一方で、将来の市場を洞察し、良い経営をすれば、株式市場での期待は高まり株式価値は上がる。株価が上がれば従業員もキャピタルゲインを享受でき、豊かになる。

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