「失われた30年」と呼ばれた日本で、ゲーム業界にイノベーションを起こしたのが久夛良木健氏だ。94年に初代「プレイステーション」を生み出したことから「プレステの父」と呼ばれ、ソニーグループの主力事業の礎を築いた。現在はAI(人工知能)関連スタートアップであるアセントロボティクス(東京・渋谷)で、CEO(最高経営責任者)として製造や物流向けのAI開発を指揮する。2022年4月からは近畿大学に新設される情報学部の初代学部長に就任する予定で、人材育成にも乗り出す。今なおイノベーションの最前線に立ち続ける久夛良木氏に、新型コロナウイルス禍で激変した世界における「ニッポンの活路」を聞いた。

<span class="fontBold">久夛良木健(くたらぎ・けん)氏</span><br>1950年東京生まれ。75年ソニー(現ソニーグループ)入社。93年ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)を設立し取締役開発部長就任。94年に初代「プレイステーション」を生み出す。99年社長、2006年会長兼グループCEO(最高経営責任者)。03年ソニー副社長兼COO(最高執行責任者)。07年ソニー・コンピュータエンタテインメント会長を退任。09年サイバーアイ・エンタテインメント設立。AIスタートアップのアセントロボティクスでは18年から社外取締役。20年8月末よりCEO。22年4月からは近畿大学に新設される情報学部の初代学部長に就任予定。(写真:吉成大輔)
久夛良木健(くたらぎ・けん)氏
1950年東京生まれ。75年ソニー(現ソニーグループ)入社。93年ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)を設立し取締役開発部長就任。94年に初代「プレイステーション」を生み出す。99年社長、2006年会長兼グループCEO(最高経営責任者)。03年ソニー副社長兼COO(最高執行責任者)。07年ソニー・コンピュータエンタテインメント会長を退任。09年サイバーアイ・エンタテインメント設立。AIスタートアップのアセントロボティクスでは18年から社外取締役。20年8月末よりCEO。22年4月からは近畿大学に新設される情報学部の初代学部長に就任予定。(写真:吉成大輔)

新型コロナウイルスの感染拡大から2年がたとうとしています。世界の経済や人類の生き方にどのような影響を与えたのでしょうか。

久夛良木健氏(以下、久夛良木氏):経済や暮らしなど、あらゆることを同時並行的に急激に再興しなきゃいけなくなったのは確かだ。まだまだ先だ、もう少しゆっくり考えればいい。そう思っていた変化が前倒しになった。ある意味では世界が転換するきっかけになっただろう。

 以前は「日本はまだまだいける」と言っていた識者もいたが、あっという間に置き去りにされるようになっている。新しい商品やサービス、技術の社会実装が世界各地で一気に進んでいる。いい意味で、新しい波が来ている。年齢や国籍に関係なく大きなチャンスだ。

 新型コロナワクチンの量産と導入が一気に進んだのが好例だ。医療分野はサイエンスであるにもかかわらず、色々なしがらみを抱えている。そんな中、世界のベストプラクティスを共有することで実現したわけだ。こんな短期間で全世界同時にチャレンジしたことはなかったでしょ。

「日本はどうすべきか?」はおかしい

こうした中、日本はどういった点に活路を見いだすべきでしょうか。

久夛良木氏:僕はソニー時代を含めて、日本という枠組みで物事を考えてこなかった。常に人類全体でイノベーション創出をとらえていたからね。世界でベストプラクティスが起きているわけだし、そういう考え方はちょっと違うかな。

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