日本の企業や社会が再び競争力を取り戻すためのヒントを探るインタビューシリーズ「ニッポンの活路」。今回は世界最大の資産運用会社であるブラックロックの日本法人でチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)を務める福島毅氏に、投資先として期待する日本企業について話を聞いた。ブラックロックの運用資産残高は2021年6月末時点で約9兆4900億ドル(約1054兆円)に達する。巨額の資産を運用するだけでなく、投資先に気候変動への対策と情報開示を求める「脱炭素」の投資方針を打ち出すなど、企業行動に与える影響も大きい。新型コロナウイルス禍で激変した世界で、競争に勝ち、市場で評価される企業の条件を聞いた。

コロナ禍を経験した後の世界で、日本企業が生き抜くためのカギは何になりそうでしょうか。世界最大の資産運用会社として日本の株式市場での投資も手掛けている立場からどうみているのかを教えてください。

福島毅氏(以下福島氏):まず、競争環境は新型コロナ前の延長線上にはなく、全く新しい時代に入ったのだと、企業のマネジメント層が認識する必要があると感じています。

 とりわけ商品やサービスの値上げができる企業に注目したいと思っています。日本では社会全体でデフレ的な環境が続き、企業も「安ければ良い」という価値観に傾きがちでした。しかしもうデフレ環境ではありません。値段を上げられないサービスについては、よほど生産性が向上して値段を上げなくてもいいのなら別ですが、そういうサービスの持続性は徐々に問われてくると思います。

 値段を上げることは、原材料価格の上昇に合わせてマージン(利幅)を維持したり、引き上げたりするためだけではなく、従業員の報酬を引き上げる余裕を持つことにもつながります。趨勢的に日本では労働分配率が下がってきています。これからは、従業員が会社の中で有意義に過ごしているかが問われます。

 
<span class="fontBold">福島毅(ふくしま・たけし)氏</span><br />ブラックロック・ジャパン 取締役チーフ・インベストメント・オフィサー 1987年日興証券投資信託委託(現・日興アセットマネジメント)入社。日本バンカーストラスト信託銀行、明治ドレスナー・アセットマネジメント(現・明治安田アセットマネジメント)、GIキャピタル・マネジメントなどを経て2016年ブラックロック・ジャパン入社
福島毅(ふくしま・たけし)氏
ブラックロック・ジャパン 取締役チーフ・インベストメント・オフィサー 1987年日興証券投資信託委託(現・日興アセットマネジメント)入社。日本バンカーストラスト信託銀行、明治ドレスナー・アセットマネジメント(現・明治安田アセットマネジメント)、GIキャピタル・マネジメントなどを経て2016年ブラックロック・ジャパン入社

 企業は従業員に夢を与えつつ、給料もきちんと上げていかないといけません。そういう会社が優秀な人材を集めることができ、株式市場で評価され、ビジネスで競争に勝っていくでしょう。我々は今、「シェアホルダー主義」から、「ステークホルダー主義」への移行期にあるということではないでしょうか。

 また、これほど環境が変化する中では、ダイバーシティ(多様性)も大事です。勤続が長い社員だけではなく、異なる視点を経営戦略に取り込むことが重要だからです。今話題の社外取締役の拡充も大事ですが、我々としては執行役の選任に当たってもダイバーシティを進めていただきたいと考えており、そのためにシニアマネジメント層の労働マーケットがより流動的になることに期待しています。

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