ファンから愛着を込めて「漢(おとこ)のカワサキ」と呼ばれることもある川崎重工業の二輪車。川崎重工はその二輪車とエンジンの事業を分社して2021年10月に「カワサキモータース」を設立。その国内販売会社となる「カワサキモータースジャパン」の社長に桐野英子氏を起用した。川崎重工の国内グループ会社で女性がトップに就任するのは初めてという。二輪車業界でも女性トップは珍しい。男性優位の文化が根強い重厚長大産業で桐野氏はどのようにキャリアを築いてきたのか。

川崎重工は男性的な会社のイメージがありますが、どのようにキャリアを積んできたのでしょうか。
桐野英子氏(以下、桐野氏):会社に入ってからこれまで、ずっと苦労しっぱなしですね(笑)。
まず、社内に女性が圧倒的に少ない。9割以上の会議はいまだに女性が私1人だけというのが現実です。私は「女性だから」「男性だから」とは意識していませんが、どうしても育ってきた環境や生物学的な違いがあります。若い頃はそんな違いによる「区別」が理解できませんでした。男女の別なく話す私の意見を、周りの男性は理解できない。現在に至るまで私は「珍しい生き物」の扱いでした。年齢を重ねてその区別を許容できるようになってきましたが、やはり苦労は多いです。
周囲との衝突はなかったのですか。
桐野氏:若い頃はぶつかりましたよ。今になって思えば楽な道ではありませんでしたが、私の周囲の皆さんはもっと大変だったんじゃないかな(笑)。
私が入社した30年ほど前は「お茶くみは女性がしなければならない」「宴会ではお酌をしなければいけない」――そんな空気がありました。それでも私は自分の意見を貫きました。すると「女のくせに…」「女が何を言ってるんだ!」と言われるわけです。私が当然だと考えていることを話しても、相互理解がなかなか進みませんでした。
今では社内の雰囲気も変わってきたのでしょうか。
桐野氏:はい。女性社員や外国人社員が増えて、様々な考え方を持つ人材が増えてきました。それに伴い、多様性を受け入れる土壌が出来つつあります。
女性の感性で気が付いた消費者ニーズを一生懸命に説明しても、以前はほとんど聞いてもらえませんでしたが、最近は異なる視点の意見を受け入れようという前向きな雰囲気があります。それでも、自分の海外での勤務経験などを振り返ると日本はまだ多様性の受容という面で遅れていると感じます。
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