働き方改革が進む中で、企業が組織のあり方を見直す動きは活性化した。しかし、その前提はあくまで「成長の持続」だ。国内における自律分散型経営の第一人者である武井浩三氏は「今こそ発想を変えて産業構造の転換につなげてほしい」と訴える。

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、働き方改革が急速に進みました。
武井浩三eumo代表取締役(以下、武井氏):大企業や中央省庁、行政機関からの相談がひっきりなしにありますね。出社率は大企業で30%ほど、IT系だと5%に抑えたままのケースが珍しくありません。その結果、オフィスを手放す企業が増えてきました。固定費である家賃を劇的に下げれば、提供するサービスについて、プロモーションにコストをかけながら価格自体を下げることが可能になります。
オフィスからの通勤圏内に限られていた人材発掘も幅が広がっています。地方に埋もれている優秀な人、海外で時間を持て余している高学歴の主婦は、チャットなどのコミュニケーションツールを使えば自分の都合に合わせて働けるし、企業にとっても業務委託という形式を取って比較的安く採用しやすいメリットがあります。
つまり、働き方改革を進めるほど競合他社よりビジネスを優位に展開できることが明らかになってきたわけです。だから改革の流れは加速しているし、もう止まりようがない印象です。
オフィスの存在意義が薄れ、不動産業界は大きな影響を受けています。
武井氏:住宅やオフィスの供給量には規制が設けられていないのですが、これは先進国で日本だけです。デベロッパーは賃料を上げられるので、床面積を増やした高層の物件をどんどん建てていますが、やり過ぎて入居者やテナントが集まらず空室を抱えるようになってきました。少なくなったパイを奪い合っても、経済全体としてはプラスマイナスゼロのシーソーゲームが続くだけです。今こそ政治が介入し、産業の構造を変えるタイミングでしょう。
現在の不動産業界は、土地の有効活用を掲げる一方で、不動産を金融商品のように扱って利回りを上げていく街づくりを志向しているように見えます。住んだり使ったりする人にとってベストな姿を考えていないのではないでしょうか。必要性の低いワンルームマンションや駐車場を建てるのではなく、欧州で進んでいる「逆開発」の手法で、森に戻した方がよい事例も実際にあります。
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