3月11日、津波などで1万5900人が亡くなった東日本大震災の発生から11年。政府が主催し国立劇場(東京・千代田)で毎年開催してきた東日本大震災の追悼式は、今年から行われない。ウクライナ危機もあり、命の大切さについて改めて考える人が多い中、一瞬で多くの命を失ったあの大災害を風化させてはいけない。震災直後から復興支援を続けている城南信用金庫の川本恭治理事長に思いを聞いた。
![川本恭治[かわもと・きょうじ]氏](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00371/031000047/p1.jpg?__scale=w:500,h:331&_sh=07d0930850)
東日本大震災から11年。今後も復興支援を続けていくのでしょうか。
川本恭治・城南信金理事長(以下、川本氏):もちろんです。我々は東京の組織ですが、東北と関わりのある職員はたくさんいます。人ごとではないという気持ちで、復興への思いをつないでいきたいです。
今年も城南信金本店(東京・品川)の1階でパネル展を開催しています。東北の地元メディアの協力を得て、パネルを展示するのですが、今年は被害の様子を写した写真がないのです。

城南信金では、被災した東北地方の2信金からそこに内定していた10人を受け入れています。東北出身の職員も多くうちにいます。今回のパネル展を見て、家族が被災した福島県出身の職員が涙を流しました。被害状況を見て悲しんだわけではなく、「被災地が復興に向かって頑張っている姿」に思いが込み上げたのです。
この職員は私にこう言いました。「これまで震災について誰にも話してこなかった。でも、震災から11年がたち、風化させてはならない。少しずつでも伝えていきたいと思うようになった」と。
惨事を経験して、そっとしておいてほしいと思うのが普通です。11年がたち、少しずつ心境が変わってきたのだと思います。実際、被災地から受け入れた1人の職員が3月、初めて新入社員研修で当時の被災した経験について話をしてくれました。
具体的に、どのように被災地を支援しているのでしょうか?
川本氏:全町避難が続いている福島県双葉町では、震災後に帰還している人がいません。そこで、町は避難民が帰ることができる場所を造成しています。ただ、その町での仕事がなければ住むのは困難です。
そんな中、岐阜県に本社を置く会社が、双葉町に30億円を投入して工場を建設中です。その会社の社長が、福島大学で学んだ縁から「町の復興をお手伝いしたい」との思いがあったようです。
我々は、その会社ともお付き合いがありましたので、そのプロジェクトに携わる職員を派遣しました。この職員も東北出身です。我々ができることは限られていますが、こうした実のある支援を継続したいです。
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