経済の低迷や国際社会における地盤沈下が指摘される日本。現在、ロシアによるウクライナ侵攻が日本経済に悪影響を及ぼす中でも、主体的に打てる手は乏しいように見える。

 変化する世界情勢の「蚊帳の外」に置かれている――。どこかそんな印象がつきまとう現状を前に、ノンフィクション作家の高野秀行氏は「日本は世界の辺境になった」と指摘する。

 高野氏は早稲田大学探検部時代の著作で世に出て以来、グローバリゼーションの潮流の及ばない地を求めアジアやアフリカ、南米の辺境を歩いた。近年もブータンやソマリアといった“周縁地域“で活動する。その経験から見えてくる、日本の進路とは。

高野秀行(たかの・ひでゆき)氏
高野秀行(たかの・ひでゆき)氏
1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部時代に執筆した『幻の怪獣・ムベンベを追え』でデビュー。タイ国立チェンマイ大学日本語科で講師を務めたのち、ノンフィクション作家に。2005年、『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞を受賞。13年、『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。近著に『幻のアフリカ納豆を追え! そして現れた〈サピエンス納豆〉』。(写真=竹井俊晴)

欧米や新興国の経済成長から取り残されて、日本は貧しくなったといわれます。30年以上、海外渡航を続けられていますが、実感することはありますか。

高野秀行氏(以下、高野氏):感じるどころではありませんね。この10年、15年ぐらいの日本の沈没ぶりにはまあ、すさまじいものがあります。成田空港ほどみすぼらしい国際空港は探してもなかなか見つかりませんよ。

 現在のアジア各国の空港は巨大で豪華ですから。バンコクから帰ろうが、シンガポールから帰ろうが、ドバイから帰ろうが、成田空港に着くと田舎の各駅停車が止まる駅か、バスの終点みたいな感じがします。本当に、ユーラシア大陸のどん詰まりに来てしまったなって。

なるほど。

高野氏:でも、ここが故郷の村だしな、みたいな感じですよ。そして、またびっくりするのが、故郷の極東村はそのことに気づいていないということです。いまだにタイやインドは遅れていて、一方で自分たちはすごく近代的な暮らしをしていると思い込んで疑わないというのは驚きですよね。もちろん新興国には格差の問題がありますが、上流層の成長のスピードには目を見張るものがあります。

 アジアやアフリカの国々の政治家や財界のトップで、欧米の大学を出ていない人なんて軍人出身者を除けば、まずいないでしょう。海外経験どころか、海外の大学を出て修士号や博士号を持っている人がざらです。

 そういう人たちの頭の中はワールドスタンダードなので、当然、世界で何が起きているかを知っているし、友人も欧米諸国にたくさんいて、しょっちゅうSNS(交流サイト)で情報交換したり、電話をしたりしている。日本だけが蚊帳の外に置かれているという印象です。

日本だけが取り残されてしまっていると。

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