世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数2021」で日本は156カ国中120位と、世界の底辺グループにある。前年版からスコアの改善はわずかしか見られなかった。日本のジェンダー意識の低さの背景には、長年断ち切れずにいる悪循環が潜んでいる。社会学者でジェンダー問題が専門の上野千鶴子東京大学名誉教授は、企業に経済合理性が欠如しており、その原因に根深い組織文化があると語る。

世界経済フォーラムが2021年に出した「ジェンダーギャップ指数2021」では、日本の順位が120位でした。毎年順位の低さが指摘されていますが、一向に改善しない原因は何でしょうか。
上野千鶴子・東京大学名誉教授(以下、上野氏):男女の賃金格差など、徐々に良くなっている一面はあります。ただ、他国に比べて日本は変化が遅すぎるから取り残されているのです。
ジェンダー平等先進国のほとんどは、組織に一定割合の女性登用を義務付けるクオータ制を導入しています。あるいは、目標の女性比率を達成できなかった企業は上場させないなど、ペナルティーが課されます。
対して日本は、法律はたくさんありますが、ほとんどに罰則規定がなく、実効性に欠けます。女性活躍推進法ができた際、政府は企業に数値目標を出すように言いましたが、企業が抵抗するとすぐに引っ込めました。違反企業は名前を公表すると言いながらほとんどしていません。政権与党にやる気がないとしか思えないですね。
クオータ制が最も有効なのでしょうか。
上野氏:非常に強力なツールです。クオータ制の効果は世界的に立証されていますから、やればいいのです。もちろん民間企業のトップが人事権を行使すればいいんです。女性の意識変革やスキルアップなどボトムアップの動きはすでに十分に成熟していると思いますので、次のステップはトップダウンです。意思決定権を持つ人がその権力を行使する。数字はやはりとても大事です。
日本にできることは大きく3つあります。まずはクオータ制の導入。次は育児・介護支援の充実です。ジェンダーギャップ指数の上位国は北欧諸国が目立ちますが、どこも非常にケアサービスが手厚く、女性のケア負担を軽減しています。国民負担もその分高いですが、国民と政府の合意のもとに成り立っています。
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