楽天グループでも、米アマゾン・ドット・コムでもない――。EC(電子商取引)サイトの新たなプラットフォームとして世界的に急成長している企業がある。フランスのMirakl(ミラクル)だ。企業価値は35億ドル(約4700億円)。マクロン仏大統領主導で台頭した、いわゆる「フレンチテック」の代表的企業で、2022年には東京にオフィスを構えた。新進気鋭のスタートアップは、日本のEC市場をどう見ているのか。共同創業者兼共同最高経営責任者(CEO)であるエイドリアン・ヌッセンバウム氏が単独インタビューに応じた。
![エイドリアン・ヌッセンバウム[Adrien Nussenbaum]氏](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00371/030300073/p1.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=0a20ac0c30)
日本の電子商取引(EC)化率は8.78%(2021年時点、経済産業省調べ)。新型コロナウイルス禍を経てなお、欧米や中国と比べて低水準にとどまっています。Mirakl(ミラクル)は世界40カ国以上で企業のECサイト構築を支援し、22年には東京にオフィスを構えました。日本のEC市場の現状をどのように見ていますか。
エイドリアン・ヌッセンバウム氏(以下、ヌッセンバウム氏):私はフランスのパリで生まれ育ちましたが、22年に初めて東京を訪れて実感したのは、出店密度の高さです。1つのビルに多数の店舗が入っている。パリの市街地でショッピングするよりも、一度に多くの店舗を見比べることができます。
日本は特に都市部の人口密度が高いという事情もあって、諸外国と比べてECサイトの普及がゆっくりと進んできました。そうした側面は確かにありますが、私は日本のEC化率がなかなか上がらない本当の理由は別にあるとみています。企業側がECへの投資を積極的に行ってこなかったからではないでしょうか。
どれだけ実店舗が充実していても、本当に良いEC体験を提供できれば、また使ってみようと思ってもらえる。それは米国で証明されています。
15~20年前は米国でも「ECは不便だ」と敬遠されていました。「店舗に足を運んで商品を見て触って判断したほうがいい」と考えられていた。休日になると、車を走らせて家族でショッピングモールに行き、そこで1日中過ごすのが定番でした。
しかし、今や米国ではショッピングモールはビジネスとして苦戦し、閉鎖が相次いでいます。メイシーズやノードストロームといった大きな百貨店さえも、デジタルに大きな投資をしています。
メイシーズは22年夏、ミラクルのプラットフォームを活用して、自社通販サイトの品ぞろえを強化しました。メイシーズのジェフ・ジェネット最高経営責任者(CEO)は、こう語っています。
「自分たちが大きなマーケットプレイスにならなければ、生き残れない」
私は、日本でも同じことが起こるという確信を持っています。
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