米中貿易摩擦の長期化はグローバルサプライチェーンに大きな影響を及ぼし、企業と社会の重大な懸念材料となっている。2021年10月に発足した岸田文雄内閣は「経済安全保障戦略」策定を掲げるなど安全保障の範囲が経済分野に拡大する中、日本の政府や企業はどのような対応を取るべきなのか。国際政治学者で山猫総合研究所(東京・千代田)代表取締役の三浦瑠麗氏に聞いた。

1980年神奈川県生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。内政が外交に及ぼす影響の研究など、国際政治理論と比較政治が専門。日本学術振興会特別研究員、東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て2019年より山猫総合研究所の代表取締役。(写真=北山宏一、以下同じ)
米中対立が激化し、安全保障が重要視されています。特に注視すべき世界の動きはどのようなものでしょうか。
三浦瑠麗・山猫総合研究所代表(以下、三浦氏):尖閣諸島をめぐる中国との対立や台湾問題など、安全保障問題は常にありました。新しいのは、それが経済活動に波及していることです。今までは単発でしかなかったことが、構造的にすべてが巻き込まれてしまう状況になっていることが大きいと思います。
一番影響があるのは米国の動きです。第2次世界大戦と冷戦を経て、自由貿易体制やルールに基づく国際秩序ができました。米国は、経済活動を支える基礎部分を自由と秩序、公正などで塗り替えようとしてきました。途中に対立や摩擦はあったものの、みんなで同じ方向に向かおうとしていたさなかに、米国のトランプ、バイデン政権によって完璧に方向転換してしまいました。
意図せぬ秩序変動も
世界経済が完全に2つ、3つに分割されるような極端なことは起きません。しかし、企業など個々のアクターはリスクヘッジのために行動を取りますよね。それが秩序変動を加速させてしまうなど意図せぬ結果につながることはあるでしょう。
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