KADOKAWAの夏野剛社長は、慶応義塾大学や近畿大学の特別招へい教授として学生にIT(情報技術)を活用したビジネスなどについて教えている。「今の学生は安心感を抱いていない」と指摘しつつ、「英国のサッチャー政権が行ったような改革に取り組めば、日本はまだまだ伸びる」と話す。

(前回記事はこちら『「はんこ」は氷山の一角、古いままの日本の仕組みを壊そう』)

<span class="fontBold">夏野剛(なつの・たけし)氏</span><br />内閣府規制改革推進会議議長、KADOKAWA社長<br />早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートンスクール)卒。ベンチャー企業副社長を経て、NTTドコモへ。「iモード」などの多くのサービスを立ち上げた。トランスコスモスやグリー、USEN-NEXT HOLDINGS、日本オラクルの社外取締役を兼任。経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャーや内閣府クールジャパン官民連携プラットフォーム共同会長なども務める。慶応義塾大学、近畿大学の特別招へい教授として教育にも熱心に関わる。(写真=山下裕之)
夏野剛(なつの・たけし)氏
内閣府規制改革推進会議議長、KADOKAWA社長
早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートンスクール)卒。ベンチャー企業副社長を経て、NTTドコモへ。「iモード」などの多くのサービスを立ち上げた。トランスコスモスやグリー、USEN-NEXT HOLDINGS、日本オラクルの社外取締役を兼任。経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャーや内閣府クールジャパン官民連携プラットフォーム共同会長なども務める。慶応義塾大学、近畿大学の特別招へい教授として教育にも熱心に関わる。(写真=山下裕之)

夏野さんは2018年に出版した『誰がテレビを殺すのか』(角川新書)という著書で、米ネットフリックスを成長企業の代表例として紹介しています。世界的な優良企業が日本ではなく、米国から相次ぎ登場しているのはなぜだと考えますか。

米国の大企業は新興企業より遅いが、変わる

夏野剛・内閣府規制改革推進会議議長、KADOKAWA社長(以下、夏野氏):米国でも大きくて歴史のある企業ほど、新技術の活用が遅い傾向があります。ただし、遅くても着実に変わります。米アマゾン・ドット・コムが誕生して一番変わったのは米書店チェーンのバーンズ・アンド・ノーブルだと言われています。また、アマゾンがあらゆる商品を扱うようになって、刺激を受けて小売業の中で一番変わったのは米ウォルマートです。

 米国では、新しいプレーヤーがある程度の地位になるまでに、刺激を受けた既存勢力が同じように変わろうとするわけです。対照的に日本では、新しいプレーヤーが登場してきても、それだけで終わってしまいます。既存の大きなプレーヤーは変わろうとしません。なぜなら、経営者が変わらないからですよ。

 欧米では、新しい勝ちパターンが出てきて急激に伸び始めると、既存の大企業が一気にまねし出します。自動車業界を見れば明らかですね。米テスラがEV(電気自動車)であれだけの成功を収める前から、米GM(ゼネラル・モーターズ)やドイツの自動車大手も「EVに行くぞ」と言い始めてEVの開発を加速します。日本メーカーは最近になってようやくトヨタ自動車がEVに力を入れ始めました。日本企業は自分たちがやってきた成功パターンを捨てられないのです。これに尽きます。

夏野さんは様々な企業の社外取締役を務めています。日本企業はやはり、成功パターンを捨てるのが苦手なのでしょうか。

経営経験がある社外取締役を増やせ

夏野氏:捨てるように助言しています。社外取締役の重要な役割は、「今までにない変革を起こせ!」「起こせ!」と言い続け、どこまで背中を押せるかということだと思いますね。規制改革推進会議と似ていますが、背中を押す人がいるからこそ企業は変わろうとするわけで、いないと変わらないのです。だから僕は、日本の大企業にもっと社外取締役を増やせと、特に経営の経験がある社外取締役を増やせと主張しています。弁護士や会計士など専門職がいてもいいですが、できればマネジメントの成功体験を持っている社外取締役を増やすべきだと思っています。

 規制改革推進会議と各省庁の関係も一緒です。各省庁が今までやってきたことを自ら否定すると省内で怒られてしまうわけですが、「規制改革推進会議で言われました」と言うと「仕方ないから検討しよう」ということになります。

デジタル化が急速に進んだことで、いい大学を卒業して大企業に入って勤め上げるという、人生の成功パターンも崩れているような気がします。大学で教える立場から見えることはありますか?

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