KADOKAWA社長で2021年8月から内閣府規制改革推進会議議長を務めている夏野剛氏に、日本が抱えている問題点と規制改革の意義、成長するためのポイントを聞いた。「日本だけが生産性も低く、GDPもほとんど成長していない」と危機感を強める夏野氏は、「新しいテクノロジーに合わせて戦い方をどう変え、社会の仕組みをどう変えていくか」が課題だと説く。

内閣府規制改革推進会議議長、KADOKAWA社長
早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。ペンシルべニア大学経営大学院(ウォートンスクール)卒。ベンチャー企業副社長を経て、NTTドコモへ。「iモード」などの多くのサービスを立ち上げた。トランスコスモスやグリー、USEN-NEXT HOLDINGS、日本オラクルの社外取締役を兼任。経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャーや内閣府クールジャパン官民連携プラットフォーム共同会長なども務める。慶応義塾大学、近畿大学の特別招へい教授として教育にも熱心に関わる。(写真=山下裕之)
2021年8月に内閣府の規制改革推進会議議長に就任し、文字通り規制改革に取り組んでいます。日本の現状をどう見ていますか?
夏野剛・内閣府規制改革推進会議議長、KADOKAWA社長(以下、夏野氏):タイムリミットが刻一刻と近づいている感じがします。日本でIT(情報技術)が普及し始めたのは1996年ごろで、その年の4月にYahoo! JAPANの営業が始まりました。一方で、96年のGDP(国内総生産)とコロナ禍前の2019年のGDPが4%しか違わないのです。
これから経済を支える人口がどんどん減っていきます。過去25年間でほとんど成長できなかったツケが、とても大きな重しとなって日本にのしかかってきます。このことを我々はもう少し真剣に考えるべきだと思いますね。
米国のGDPは1996年から2019年にかけておよそ165%、フランスは70%近く成長しています。日本だけが生産性も低く、GDPもほとんど成長していません。これはもう非常に危ないというか、どうしようもない状況に落ち込んでいます。新しいテクノロジーに合わせて戦い方をどう変えていくか、社会の仕組みをどう変えていくかが重要になっているのだと思います。
20世紀の産業競争で大事だったのは、自国でテクノロジーをどれだけ開発するのかという点です。自国でしか作れないものを作って輸出する戦略が重要でした。ところがITの世界では、テクノロジーそのものは、ほとんどコモディティー化していて世界中で同じです。
新技術をすぐに導入して社会に実装する米国
ご存じのように、米国では新しいテクノロジーが出てくると、すぐにそれを導入して社会に実装します。そして何かトラブルが起きた後で規制するようになります。ところが日本は状況が異なる。新しいテクノロジーがない時代に作られた規制や社会の仕組みが、古いまま残っているのです。
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