LGBTQ+(性的少数者)の権利平等への動きで世界に後じんを拝している日本。2020年の経済協力開発機構(OECD)による調査では、性的少数者に関する法整備状況は、35カ国中ワースト2位の34位。労働力不足が叫ばれる中で、多様な人材が働きやすい社会をつくるにはどうすべきか。企業は多様性推進の帆となり得るのか。性的少数者の働きやすい環境づくりを支援する任意団体「Work with Pride」をNPO法人などと12年に立ち上げるなど、日本国内で積極的に多様性の推進に取り組んできた日本IBMで、22年から同社初代CDO(チーフ・ダイバーシティー・オフィサー)を務める福地敏行特別顧問に聞いた。

福地敏行(ふくち・としゆき)氏
福地敏行(ふくち・としゆき)氏
1962年生まれ。85年に日本IBM入社。常務執行役員金融事業担当、専務執行役員インダストリー事業本部長などを経て、2020年より取締役副社長、23年1月より特別顧問に就任。22年からCDO(チーフ・ダイバーシティー・オフィサー)も務める。08年に役員就任以来、同社における「女性」や「LGBTQ+」、「障害者」などのコミュニティーをサポートし、当事者と一緒に活動するなど、D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)推進を積極的に取り組んでいる

2022年は、11月に東京地裁で同性同士が婚姻を結ぶことができる法制度がない現状は「違憲状態」だという判決が下るなど、性的少数者の権利平等へ向けた動きに注目が集まりました。23年にも東京(2度目)や名古屋、福岡で判決がありますね。

日本IBM・福地敏行CDO(以下、福地氏):私は22年11月の東京地裁の判決結果をポジティブに捉えています。性的少数者の権利平等が議論の俎上(そじょう)に載るようになったのは、大きな一歩かなと思います。

 日本は性的少数者をはじめとするマイノリティーの権利平等で後れを取ってきました。日本IBMでは16年に国内企業としては初めて同性パートナーもカップルとして福利厚生制度を利用可能にする取り組みをしましたが、グローバルから見ると実は後れています。

なぜ日本は海外に後れを取っているのでしょうか。

福地氏:当事者が身近な存在と感じられていないからでしょう。私もかつては性的少数者が身近な存在だということに気づきませんでした。経営者の方と話すと、「性的少数者の社員はうちにはいません」という人もいらっしゃいます。けれども、そんなはずはありませんよね。存在の可視化ができていないところが、日本全体の課題としてあると思います。身近にいることに気づく、気づいてもらう工夫が必要です。

 性自認や性的指向は、一見して分かりやすいものではありません。そして、マイノリティーに理解のあるアライ(支援者)であることも、目に見えることではありません。お互いに見えないので可視化が必要です。

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