2022年は円安と物価高が急速に進行し、日本経済の課題を改めて浮き彫りにした年だった。3年目を迎えた新型コロナウイルスの感染拡大とロシアのウクライナ侵攻は、世界経済の分断を深刻化させた。23年4月に任期を終える経済同友会の桜田謙悟代表幹事に危機の時代の企業経営について処方箋を聞いた。

桜田謙悟(さくらだ・けんご)氏
桜田謙悟(さくらだ・けんご)氏
1956年生まれ。78年4月、安田火災海上保険入社。2007年、損害保険ジャパン取締役常務執行役員。10年に同社長。19年、SOMPOホールディングスグループCEO社長。22年に同グループCEO会長。介護事業進出などを主導した。19年4月から現職。(写真=清水 真帆呂)

経済同友会代表幹事に2019年に就任した後、翌20年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、22年にはロシアによるウクライナ侵攻が起こりました。感染症と戦争という異なる危機ですが、グローバル化が高度に進んだ世界経済が持つ弱点をあらわにした点で影響は同一です。企業経営は新たな段階を迎えたのでしょうか。

桜田氏:この3年はコロナ禍があり、昨年からはロシアの戦争があり、世界経済へ大打撃を及ぼしました。ここで見えてきたのは、ジオポリティクス(地政学)、あるいはジオエコノミー(地政経済学)、ジオテクノロジー(技術の地政学)と呼ばれるものの重要性でした。安全保障、国際政治が経済や経営に影響を与え、技術や生産などがどこでどう行われるのが良いかを分析し直さなければならなくなったのです。

 経営者が経営のことだけを考えていれば良い時代は終わりました。脱炭素社会に向けた取り組みのGX(グリーントランスフォーメーション)や、人権問題、あるいは従業員の満足度や幸福度を高めるEX(従業員体験)なども同じ文脈ですね。企業としてみれば、まず成長と分配ですが、さらに今の時代は「企業の価値」をどう高めていくかが重要になってきたのだと思います。前の2つは、これまでもやっていなければならないものでした。では、この混乱の時代に価値を高めるとはどういうことなのでしょう。

金融政策で麻酔をかけた状態

地政学やGX、EXというような新たな問題が続く中で、企業が生み出すべき価値は変わろうとしているということですか。

桜田氏:端的に言えば、社会課題を解決していくことに重要な価値があると思います。実を言えば、経済同友会でもここ1年以上、この議論をしてきました。社会課題にチャレンジする企業はやはり価値を生み出していると思うのです。環境や高齢化、地政学、人権……といった社会課題に解決策を考えて取り組むことは、成長や分配にもつながり、社会価値を上げていくはずです。

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