21年4月、イーロン・マスク氏が設立したスタートアップ、米ニューラリンクは1本の実験動画を公開した。

実験に参加した9歳のサル「ペイジャー」は、ディスプレーの前に座り、ボールを打ち返す卓球のようなゲームをしている。ゲームを操作するためのコントローラーやジョイスティックは存在しない。その代わり、ペイジャーの頭蓋骨にはチップが埋め込まれている。チップによって脳の神経活動を測定し、「意思」だけで、テレビゲームを操作することに成功したのだという。サルが握っているのはご褒美として得られるバナナスムージーを飲むための管だ。
意思や思考のみでコンピューターや機械を動かす――。こうした世界を目指し、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)と呼ばれる技術の研究が進んでいる。BMIとは、文字通り脳と機械を結び付ける技術のこと。脳の神経細胞が発する電気信号や脳血流の変化などを測定。コンピューターと接続し、脳の動きを分析して外部の機械を操作する。逆に、脳に電気信号を送ることで、視覚や聴覚を呼び起こすこともできる。
ニューラリンクの実験では、サルの左右の脳にチップを埋め込み、脳の活動を記録している。まず、サルに実際にゲーム用のジョイスティックを操作させ、脳の活動とジョイスティックの操作の関係をモデル化。結果、脳の活動の測定を通じて、サルが意図する操作をリアルタイムで予測することに成功し、物理的なジョイスティックなしでも、脳内でイメージするだけでゲームを操作できるようになったという。
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