「意のままに動く第3の腕が手に入れば、人の生産性はもっと高まるのではないか」。新たな機械を人間に装着して、文字通りの「身体拡張」を目指す研究者がいる。早稲田大学理工学術院の岩田浩康教授が開発するのは、顔の向きと声を基に動く「3本目の腕」だ。さらには、3本目の腕を脳波によって動かそうという研究も行われ、実験に参加した15人中、約半数は思い通りの操作ができたという。念じればロボットが人に代わって作業をしてくれる。そんな未来はくるのだろうか。

早稲田大学の岩田浩康研究室で開発した「3本目の腕」は顔の向きと音声による指示で作業を手伝ってくれる
早稲田大学の岩田浩康研究室で開発した「3本目の腕」は顔の向きと音声による指示で作業を手伝ってくれる

3本目の腕が生活をアシスト

 眼鏡型の装置を付けた男性が、ボウルの中でハンバーグの具材を両手でこねている。調味料のビンに顔を向け、口元のマイクへ「取って」と指示すると、背中に装着したロボットアームが伸び、ビンをつかむ。顔の向きで対象物を特定し、音声認識により機械を操作する仕組みだ。

 早稲田大学理工学術院の岩田浩康研究室では、こんな実験風景が見られる。大学院にいた20年以上前からヒト型ロボットの実現に取り組んできた岩田教授が、「第3の腕」の研究を始めたのは6年ほど前から。「全自動で動くロボットを目指したが、身の回りのことを全てやってくれるロボットができたら、人は退化しかねない。高齢者や障害者が持っている機能を高めて、やりたいことをできるようにするのが重要だと考えた」(岩田教授)のが動機だ。

 実験を通して分かったのは、一定の注意を配分しなければ「第3の腕」を自在に動かせないということだ。第3の腕への注意配分が大きくなりすぎては、第1、第2の腕がおろそかになってしまう。「わずかな注意配分で確実に動作できるような設計が必要だ」と、岩田教授は考えた。

 注意配分を減らせるよう、人工知能(AI)を組み合わせて動作を習熟させた。するとわずかな注意配分で、「ながら動作」が可能になった。繰り返しの動作の場合には、AIが操作者の意図を先読みして動けるようにもなった。

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