人間の子どもに化けた「タヌキの子」

「発達障害とは何か」ということを沖田さん自身の体験からできるかぎり簡単な言葉で表現するとしたら、どういう表現になりますか?

沖田:小学生のころは、自分は「タヌキの子みたい」と感じていました。「タヌキが人間の子どもに化けて、一生懸命、人間のルールを覚えようとしている」という感じです。真似はできるのですが、人間のルールを根本的に理解していないので、的外れなことになっちゃって、外から見るとすごく目立っていたみたいですね。

 先生の指示は、ほとんど理解できませんでした。怒られていることは分かるんですけど、何について怒られてるのかがさっぱり分からない。それで、頭の中がフリーズしてしまうんですね。だから、いつもぼーっとしているように見えたようです。私としては、皆と同じように頑張ってやろうとしているのですが、10分の1もできていない。そんな状態が発達障害だと思います。

「周りと同じになりたい」という思いは、強かったんですね。

沖田:人間の子どもに憧れて化けてみたけど、尻尾も出ているし耳も生えている、みたいな感じですね。いじめられて「あっち行け」と言われても、人間になりたいからついていく。とにかく「日本人の子ども」になりたいと思っていました。日本の子どもになじみたかった。

 ですから「どうやったらみんなと仲良くできるんだろう?」と、いつも考えていました。ただ、どうやって友達をつくったらいいのかも分からなくて。そんなふうに悩んでいたときに、テレビで『サザエさん』を見ていたら、「友達を家に呼んでお菓子を出す」というシーンがあったんです。「ああ、こうすればいいんだ」と思って。それで、同級生を家に呼んで「はい」って、お菓子を出しました。でも、それしかしないので、同級生はつまらなくなって帰っちゃう。おかしいな、どうしたらいいんだろうと。「何を一緒にしたら友達なのか」という「友達の定義」が分からなかったんです。

そういうことって、周りも教えないですもんね。

沖田:自然にできるようになるんですよね、きっと。

小学生のころを振り返って「自分のことをタヌキの子みたいと感じていた。人間の子どもに憧れて化けてみたけど、尻尾も出ているし耳も生えている、みたいな感じ」と振り返る(写真:栗原克己)
小学生のころを振り返って「自分のことをタヌキの子みたいと感じていた。人間の子どもに憧れて化けてみたけど、尻尾も出ているし耳も生えている、みたいな感じ」と振り返る(写真:栗原克己)

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