飢餓感が、自発性を生む
中邑:今の子どもたちの課題は、進学校に通うような成績優秀な子どもも似たようなものです。不登校の子どもたちと、本質的にはあまり変わりません。目的を持たずに、自分から動ける場がない。一生懸命勉強してきて、子どもらしくふざけたことがない子もいます。
今年(2022年)の夏、ポルシェ(ポルシェジャパン)と一緒に、受験勉強に忙しい中高生を10人ほど集めて、5日間のプログラムをしたんです。参加者には、名門進学校に通う子もいました。初日は愛媛県の宇和島に現地集合。ただし、あらかじめJRのチケットを送っていて、指定の電車で来ないといけない。青森の子も宮崎の子も。スマホは禁止です。
青森から宇和島だったら、普通は飛行機を使いますよね?
中邑:そうなんですが、あえて「全員、電車で集合」と決めています。しかも、青森から来る子も宮崎から来る子も、全員の移動時間がほぼ一緒になるようにルートを設定するんです。
青森だとか、北のほうから来る子たちは、まず新幹線や在来線で東京に到着して、そこから西に向かいます。一方、宮崎は、四国の愛媛と海を挟んで向かい側なのに、そもそも直通のフェリーがありません。だから宮崎の子は、鹿児島からぐるっと九州を北上して、本州に渡る。
宮崎の子は、出発地は宇和島から近いのに、なんだかどんどん宇和島から離れていきますね。
中邑:そうなんですよ。地方同士がつながっていないことが、実感としてわかります。そんなふうに、みんな5時間くらいかけてやっと岡山に着くんですね。そこで在来線の特急「しおかぜ」に乗ります。指定席券はあらかじめ送付しています。だけど参加した子たちは、まさか自分の隣の席に同じプログラムに参加する仲間が座るなんて知りません。ただ座ってみたら、周りは中高生ばかり。そこで、声をかけると思いますか?
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