「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。
発達障害という言葉の認知度は、ここ10年ほどで急激に高まった。生きづらさを解消するきっかけになったという人が多くいる一方で、弊害も指摘される。
「子どもに対して、安易に発達障害の診断を下す傾向が見られる」と警鐘を鳴らすのは、東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)シニアリサーチフェローの中邑賢龍氏。「発達障害だから、投薬して『治そう』『変えよう』という姿勢で大人が臨めば、子どもの自信をいたずらに失わせてしまう」と話す。
中邑教授は、不登校などの課題を抱える子どもたちに、学校とは異なる学びの場を提供するプロジェクト「LEARN(ラーン)」などを推進している(*)。多様な個性を持つ子どもたちが、その個性を「矯正」されることなく、のびのびと育っていくには、大人は何をどうサポートすればいいのか。
3回シリーズでお届けした中邑氏のインタビュー(*)も、今回が最終回。最後に、国連が日本政府に中止を要請した「特別支援教育」について議論した。
中邑先生は「LEARN」などのプロジェクトを通じて、個性的なお子さんとたくさん関わってこられたと思います。そのような視点から、近年「発達障害」に注目が集まっていることを、どのように見ていますか。
中邑賢龍氏(以下、中邑):言葉として広がりすぎているように感じます。
私も発達障害という言葉を使いますし、ADHD(*)やASD(*)ともいいます。大人になって社会に適応できずに困っている人たちを、社会の制度のなかで救済するという意味において、「発達障害」という概念をつくる必然性はあったとは思います。しかし、今、それを子どもにまで広げ過ぎている。
*ASD(Autism Spectrum Disorder):自閉スペクトラム症

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