不登校と学習障害の深い関係

中邑:文部科学省のなかで、調査をしている部署が違うんですね。不登校は初等中等教育局の「児童生徒課」、学習障害だったら「特別支援教育課」といった具合に、別のセクションが担当していて、基本的に縦割りなんです。

 別々に調査をしているために、背景がわかりにくくなっているのです。不登校の調査のなかに、学習障害の問題が入っていない。それは「ほかの課」のことだからです。不登校は生徒指導の問題、学習障害は特別支援の問題と、切り分けられています。私は「調査の枠組みを変えよう」と、何度も提言してきたのですが、一朝一夕には変わりません。

不登校と学習障害は、別の事柄として扱われている。

中邑:でも、調べてみれば明らかに関係しているんですよ。不登校の原因がいじめだと思っている人も多いのですが、いじめは必ずしも直接の原因ではありません。文字が書けない、勉強ができない結果として、いじめが起きていることもあるんです。いじめの前に、読み書きの問題や学習障害があるのにそれを見逃している。縦割りの調査では見えてこないんです。

ということは、学習障害がある子を早期に発見してサポートすれば、不登校の子が減る可能性があるということですよね。

中邑:減りますよ、きっと。

国の体制が変わることを期待したいところですが、子どもは日々成長していきます。学習障害の子を早期に見つけるために、今、できることはありますか? 

中邑:現場の先生に期待したいです。特に低学年の担任の先生です。一番簡単なのは、漢字の書き取りの宿題に「何分かかったか」を書く欄をつくっておくことです。かかった時間を書いてもらうだけです。するとだいたいの平均がわかります。そのなかに、みんながだいたい10分で終わっている宿題に、30分や1時間かかっている子がいるはずです。

それで「書きの困難」がわかるんですね。これは学習障害かもしれない、と。

中邑:何より子どもがしんどい、ということがわかります。そういう子がいたら、「書き取りは1文字10回じゃなく、3回でいい」というふうに宿題を変えればいい。量を減らすのです。ムリにほかの子と同じようにさせようとすると、心に傷を残したり、勉強や学校が嫌いになったりする恐れがあります。それをまず防ぐ。宿題のコントロールは重要です。

 ほかにも現場の工夫でできることは、いろいろとあります。

次ページ なぜ、テストで計算機を使わせるべきか?