「家出」の効用
中邑:「家出」を教えるプログラムもつくりました。子どもって家出、してみたいですよね。
確かに家出には、憧れがあるかもしれません。
中邑:不登校の子などは家を出たくても出られないし、親子関係が悪い家だっていっぱいあります。それなら単純に、子どもを家から引き離したらいいと考えました。いくつかの地方自治体で開催しましたが、「家出したい子、集まれ」と募集すると、結構、集まってくるんですよ。
「家出」のプログラムには、初級編、中級編、上級編があり、上級編では、実際に家出をします。
初級編は「家出の心得」。課題は「500円玉1つで4時間外で過ごす」ことです。持ってきていいものは、自分が必要と思うもの3つだけ。スマホやゲーム機器はダメです。「水筒、傘、時計」を選ぶ子もいれば、「虫網、虫かご、冷却タオル」という子がいたりします。
選ぶものに個性が出ますね。
子どもたちは、その日の朝が初対面です。それから3人1組になったり、1人で行動すると決めたりします。そこは自由です。大人は100メートルくらい離れて見守ります。夏だと暑いからショッピングモールで過ごす子たちもいますし、いきなりカップラーメンを食べだす子もいました。親が普段、カップラーメンを禁止しているから、食べてみたいんですね。「先生たちを、まいてやろうぜ」と逃げ出す子もいます。でも大丈夫。僕らにはGPS(全地球測位システム)があるので。
「徹夜」とか「家出」とか、「しちゃいけないけど、してみたいこと」というのが魅力的ですね。
中邑:どんなことであっても、「やりたいと思うことを実現する」って素晴らしいじゃないですか。だから、どうしたら子どもたちのモチベーションが高まるかということは、すごく考えています。徹夜でも家出でも、そういった場を僕たちが、もっとつくっていけたらいいなと思います。それが僕たちの考える未来の教育で、発達障害と呼ばれる子どもたちに必要なことだと思うし、すべての子どもに必要な教育だと思うんです。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「もっと教えて!「発達障害のリアル」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?