注目を集めながらも、理解しにくい「発達障害」の世界。そんな「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索し、できるだけ平易に、かつ正しく紹介することを試みる本連載。

 前回に引き続き、小児科医の高橋孝雄氏に「子どもの発達障害」について尋ねる。

 多くの病気に当てはまる「早期診断、早期治療」の原則が、子どもの発達障害には当てはまらないという高橋氏。「早期診断」が、親の「早期心配」をあおるだけでは逆効果。「発達障害」の診断を告げる前に、告げることのメリットとデメリットを考えることが重要という。なぜか? 治療薬の効果なども尋ねた。

前回、子どもの発達障害の診断は「お子さんやご家族が日常生活で本当に困っているか」がポイントになるとうかがいました。けれど、「子どもが本当に困っているか」の判断は難しい気がします。「子ども本人が自覚する困難」は、ある程度大きくなってからでないと生まれないと思うんです。そうなると、「もしかしてうちの子は発達障害?」と思った親は、「本当にそうであるなら、できるだけ早く診断を付けたい」と考えてしまいそうです。

高橋孝雄氏(以下、高橋氏):黒坂さん(インタビュアー)は、なるべく早く診断を付けたほうがいいとお考えなんですね? 手遅れにならないうちに、と。

はい。できるだけ早く分かったほうが、できることが多いと思います。

高橋氏:「早期診断、早期治療」がいいというのは、大抵の病気に当てはまる原則です。ただ、子どもの発達障害の場合は少し違って、「早期診断、早期心配」にならないように十分な配慮が必要です。

早期心配……。早いうちから心配しちゃダメですか?

<span class="fontBold">高橋孝雄(たかはし たかお)</span><br>慶應義塾大学医学部教授(小児科学教室)。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。日本小児科学会前会長、日本小児神経学会前理事長。1957年8月生まれ。1982年慶應義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年に帰国し、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。 別名“日本一足の速い小児科教授”。著書に『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て 』(マガジンハウス)がある(写真:栗原克己)
高橋孝雄(たかはし たかお)
慶應義塾大学医学部教授(小児科学教室)。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。日本小児科学会前会長、日本小児神経学会前理事長。1957年8月生まれ。1982年慶應義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年に帰国し、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。 別名“日本一足の速い小児科教授”。著書に『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て 』(マガジンハウス)がある(写真:栗原克己)

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