治療の最大の目的は「自己肯定感を下げない」こと
高橋氏:発達障害の治療において非常に大切なことがもう1つあります。それは二次障害を防ぐことです。
二次障害は、最初のADHDやASD、LDなどの障害から派生して、うつ病など別の障害が起こることですね。
高橋氏:発達障害を持つ子は、どんなに頑張っても試験になると点数がとれない、時間が足りない。頑張っても、その頑張りが成果に結びつかない。LDの子がそうですよね。学校でいじめの対象になることもあります。
その状態が何年間も続くと、自己肯定感がひどく下がってしまうんです。「どうせ自分は何をやってもダメなんだ」と思うようになります。
確かにLDがある息子も、小学校2年生で作文や感想文を書くことが増えたあたりから、「僕はバカなんだ」と言って落ち込むようになりました。
高橋氏:中学校に上がるくらいになると、一言で言えば諦めてしまうんですね。なかには、引きこもりになったり、自分を傷つけたり、非行に走ったりする子も出てきます。
ADHDの場合、犯罪率が一般の平均より高いというデータもあるようですが、衝動性が関係してくるのはごくわずかで、原因の大部分はそれまでの苦労の多い人生にあるんだと思うんです。他人に理解してもらえない生活しづらさ、報われない努力、いじめなどが重なり、どうしようもなくなる。誰も助けてくれない。誰も自分の努力を見ていない。なぜ自分はこんなにダメなんだと。それが、引き金となるんです。
発達障害という一次障害から生じた二次障害で、自分や他人を傷つける可能性が生まれてしまうんですね。
高橋氏:ですから、自己肯定感が下がらないようにすることが必要です。上げる必要はないんですよ。だって、子どもって本来はみんな、自己肯定感が高いから。発達障害があることが原因で、自己肯定感が下がり、二次障害、すなわち「自分なんてどうでもいい」という状態に陥ることを避けるのが治療の最大の目的です。その結果、普通に日常生活を送る、好きな仕事に就く、そして幸せな人生を手に入れる、ということになります。
二次障害につなげないことが、親の役割にもなりそうですね。
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