「発達障害」と気付かないことの幸せ

でも、「ASDじゃありません」と断言してしまって、問題はないんですか?

高橋氏:発達障害と断言できるお子さんはむしろ少ないということです。そして現代のように発達障害に関する情報が簡単に手に入る状況では、親御さんによる“過剰診断”がどうしても多くなる。すると「発達障害ではありません」と断言してあげたほうがいい場合が、相対的に増えてくるわけです。

 僕ら小児科医にとっての発達障害は、「発達が進むに従って、次第に明らかになってくる日常生活上の困難さ」であると前回、お話ししましたよね。ですから、困難が明らかになる前の、小さいうちの診断は慎重にすべきだと思います。そういう前提に立てば、ADHD(*3)やASDの診断は早ければ早いほどいい、というわけではないんです。診断名をただ突きつけても、有効な治療がないまま見守るだけであれば、親御さんの心配が早く始まるだけです。そのような無責任な診断は避けたいと思っています。

小さいうちに発達障害の診断を下すことは、慎重にしなければならないということなんですね。無理やり診断を付けても、ただ親の心配が早く始まるだけでは無意味だと。確かに、学習障害(LD *4)を持つ私の息子の場合も、幼いころ、ほとんど話をしなくて心配していたのですが、「そのうち話すかな」とわりとのんびり構えていた気がします。そのころに診断名を告知されていたら、もっと不安になっていたかもしれません。

高橋氏:そうなんです。発達障害と気付かないことの幸せもあるんです。

*3.注意欠如・多動症、ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)
*4.限局性学習症/限局性学習障害、LD (Specific Learning Disorder)

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