「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。
前回、前々回に引き続き、京都府立大学文学部の横道誠准教授にお話をうかがう。専門はドイツ文学やヨーロッパ思想などの研究だが、40歳でASD(*)、ADHD(*)の診断を受けてから、発達障害者などの「当事者研究」をスタート。「自助グループ」の運営にも力を入れ、発達障害に関する著作を多く発表している。
前々回「発達障害を持って生きるのは、エヴァンゲリオンの操縦と似ている」は、発達障害者としての内面について、前回「発達障害の私たちは猫に似てるが愛されない。『自助』が要る理由」は、「自助グループ」について話をうかがった。
3回シリーズの最後となる今回は、発達障害者を「脳の少数派」として捉える「ニューロダイバーシティー」など、新しい考え方について。
* ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder):注意欠如・多動症
横道先生は発達障害について説明するとき、「脳の多様性」や「ニューロダイバーシティー」という言葉を使われます。この言葉について教えてください。
横道誠氏(以下、横道):「ニューロダイバーシティー」というのは、脳の特性に基づく発達障害の診断を、病気や障害とみなすのでなく、脳の少数派(ニューロマイノリティー)として捉える考え方です。米国で始まった「自閉症権利運動」から、1990年代後半に生まれた概念で、今、発達障害の関係者たちの間へと広がっています。
この立場に立つと、発達障害と定型発達(*)の違いは、「脳の多様性」で説明できます。発達障害者がニューロマイノリティーであるなら、定型発達者がニューロマジョリティー(脳の多数派)ということになります。誰もが皆、一人ひとり、脳の多様性のなかを生きているということです。

Powered by リゾーム?