「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。
前回(「発達障害を持って生きるのは、エヴァンゲリオンの操縦と似ている」)に続き、京都府立大学文学部の横道誠准教授のインタビュー。ドイツ文学やヨーロッパ思想などを専門とする研究者だが、40歳のとき、ASD(*)、ADHD(*)の診断を受けた。その後、発達障害者などの「自助グループ」を主宰するようになり、発達障害に関する著作を多く発表している。
発達障害者が生きづらさを解消しようとしたとき、「公助」に期待できることは現状、限定的だと横道氏は話す。だからこそ、同じ課題に苦しむ当事者が集まり、生きづらさを解消していく「自助グループ」が活発になっているという。自助グループとは、どのような集まりなのか。どのような対話を通じて、何を解決しているのか。
* ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder):注意欠如・多動症
横道先生は、発達障害の診断を受けてから、「自助グループ」を多く運営されるようになりました。自助グループとは、何でしょうか。
横道誠氏(以下、横道):同じ課題に苦しむ当事者が集まり、体験談を語り合うことで、課題の解決や克服を目指すものです。始まりは、アルコホーリクス・アノニマス(AA)というアルコール依存症からの回復を目指す自助グループです。現在では、薬物依存症、ギャンブル依存症など、さまざまな課題に対応するものがあり、発達障害の人たちの自助グループもあります。
対面で直接集まるだけでなく、オンラインで集まったり、SNS(交流サイト)を使ったりと、形態もさまざまです。当事者だけでなく家族や、心理士などの支援者が参加することもあります。
ご著書の『唯が行く!』を読むと、自助グループの場でのメンバーのやりとりが、小説仕立てで再現されて、具体的なイメージがつかめます。
例えば、主人公の唯が、「自分のことを好きになるのが難しいときがある」と打ち明けたとき、発達障害のあるほかのメンバーが「自分の場合、発達特性を『悪魔の球根』などと名づけるようにしているんだ」といって、こう説明します。

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