「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。
今回、インタビューするのは、40歳でASD(*)、ADHD(*)の診断を受けた、京都府立大学文学部の横道誠准教授。専門はドイツ文学やヨーロッパ思想などの研究だが、診断を受けた後、発達障害者などの「当事者研究」をスタート。「自助グループ」の運営にも力を入れ、発達障害に関する著作を多く発表している。
本連載では、医師や研究者などに取材する「外側の視点」と、発達障害を持ちながら生きる当事者に取材する「内側の視点」の2つを設定してきたが、横道氏は、両方の視点を持つ。
初回は、内側の視点。発達障害を持つ人にとって、私たちの生きる社会はどのように映り、感じられるのか。著書のタイトル『みんな水の中』を手掛かりに、ひもとく。
* ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder):注意欠如・多動症
今回は、発達障害者としての横道先生に、ご自身の内面についてうかがいます。ご著書のなかで印象的だったのが、記憶の時間軸がバラバラで、自分の歴史が点で記憶されているという記述です。つまり、記憶が「線」ではなく「点」である。それは、どのような感じなのでしょう?
横道誠氏(以下、横道):そうですね、今の自分がどうやってこうなっているのかが、あまりよくわからないという感覚ですね。いつも「水の中」にいるって感じるのには、そういう理由もあるのでしょう。
『みんな水の中』。横道先生が発達障害と診断されてから著した本のタイトルですね。
横道:自分の意識が、あっちに行ったりこっちに行ったりするからというのもありますし、空間感覚も普通とは違うと思うので……。そうですね。ASDらしい感覚として典型的なのは、例えば、台所で料理をつくっているときに突然、宇宙のことを考え始めたりするわけです。「ビッグバンってホントにあったのかな?」という考えが浮かんできて、そこから思考があっちへ行ったり、こっちへ行ったりするわけですよ。
えっ、それで料理ができますか?
横道:もちろん難しいですね。いろいろと困ったことが起きます。
そうですよね。

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