「発達障害」とは「音痴」「運痴」と同じようなもの

高橋氏:ええ。いずれは言葉が出てくることが大半ですから。ただ、日常生活で困ったこととして、「保育園や幼稚園で、お友達の顔を引っかいたり、すぐに手が出てしまう」ということがあります。「なるほど、それは無理もないですね。お子さんをあまり責めすぎないように、優しく諭してあげてくださいね」と、お話しします。「おもちゃ、貸してほしかっただけだよね。今度は“貸して”って、言ってみようね……」と、話しかけていただきたいのです。

無理もない行動なんですね。

高橋氏:はい。周りの状況も人々が話している内容もよく理解できていて、でも言葉で表現できずに、頭のなかでいろいろな思いがグルグルしていることの証しだからです。言いたいことが言えない。だから、手が出るのです。でも、そういう言語症の子は我慢強く5歳くらいまで待ってあげると、パーッと言葉が出てくることが多いのです。言語症で2歳すぎから2年ぐらい通院している子が、半年前くらいからやっと少し話し出したのですが、先日の外来ではもうずっとしゃべりっぱなしでした。自分からは何も話さなくても、お母さんの顔の表情から気持ちを推測したり、お友達と楽しく遊んだりできて、強いこだわりや知覚過敏のような日常生活に悪い影響を及ぼす症状がないなら、まずASDの心配はありません。

発達障害のなかには、「言語症」のように心配が要らないものもあるんですね。

高橋氏:実は「発達性協調運動症」というのも、現在では発達障害に含まれているんですよ。いわゆる「運動音痴」ですね。昔、体育ができないと叱られましたよね?

はい。できるまで鉄棒の練習をさせられたりしました。

高橋氏:今は、叱らないですよ。運動神経の優劣による差別になるからです。

ああ、それで思い出すことがあります。息子の読み書きが苦手なのは「学習障害」のためだと分かり、それをお姉ちゃんたちに話したときのことです。上の娘はあっけらかんと「私も音痴だしね」と言うんです。下の娘は「だったら私は運痴かな?」って。それで「まあ、なんかあるよね。あはは」と、笑い合って終わったんです。私は当時ひどく悩んでいたので、なんだかあっけにとられてしまいました。

高橋氏:ああ、いいお話ですね。お子さんのほうが直感的に発達障害とは何かが分かっているんですね。そんなふうに受け止めてもらったほうが、本人もご家族も気持ちが楽になりますね。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

春割実施中

この記事はシリーズ「もっと教えて!「発達障害のリアル」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。