IQが高くても、幸せとは限らない

高橋氏:発達障害と知的発達の遅れは異なるものです。つまり、発達障害を持つ子のなかには、IQが高い子もいるし、低い子もいます。

 発達や知的な障害の話になると、みなさんIQに注目するのですが、「知能」の評価尺度の一つにすぎません。

 例えば、「注意欠如・多動症(以下、ADHD)*6」の子どもでは「物事に集中して正確に処理する能力」が低いために、知能検査の項目ごとの点数に凸凹があるのが特徴です。つまり、そういった偏った結果が出たときには発達障害を疑う根拠の一つとはなります。「この能力の点数が凹(へこ)んでいるから、ADHDかもしれない」と。

*6. ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)注意欠如・多動症

発達障害の特性が、知能検査の結果にも表れるということですね。

高橋氏:ただ僕が思うのは、「IQの低い人」というような言い方は非常に失礼で間違った認識だと。だってIQの平均は100ですから。人口の半分はIQ100以下、“IQ低い人”ですからね。

ああ、そういわれればそうですね。

高橋氏: IQを高くするための塾もあるんですよ。だってテストですから。何回も受ければ、点数は上がります。でも、そんなことをしても意味ないですよね。

それは単にテスト慣れしただけ、ということだから。

高橋氏:「うちの子、IQが80しかなくて……」なんて相談はよくあるんですけど、「正常です」が答えです。親御さんとしては「せめて100」という気持ちになるらしいのですが、100からプラス・マイナス30は「普通」なんです。例えばIQ80の人って、一緒に職場にいても分からないことも多いです。職場環境に恵まれ、仕事仲間に支えられていれば「仕事は少し遅いけれど、真面目で、穏やかでいい人」ってことになります。逆にIQ130の人でも、知能が高いことに気付かれないことが多い。もしかすると「完璧主義で、こだわりが強くて、かえって仕事が遅い」などと思われているかもしれません。

そう考えると、例えば「発達障害もあって、IQも低いから」などと、諦めなくてもいいということですか。

高橋氏:例えばASDの方のなかには、IQが150以上ある方もいるわけです。ところが社会生活をしていく上での高度な脳機能の一部だけがうまく働かなかったりする。そう考えると、IQって何? 知能って何? という話になります。社会生活のしやすさや、幸せに生きられるかということと、IQの高い低いはほとんど関わりがないのです。

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