「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。

 発達障害のある子と保護者にとって、ひとつの選択肢となる「特別支援教育」。特別支援教育とは、障害のある子どものために用意された特別な学校(「特別支援学校」)や学級(「特別支援学級」)、指導(「通級による指導」)の総称だ。

 今年9月9日、「障害児を分離した特別支援教育」について、国連の障害者権利委員会が、日本政府に中止を要請した(概要は、こちらに)。これを受けて、波紋が広がっている。

 国連の要請が出る少し前の8月、本連載のため、特別支援学校である「大阪府立たまがわ高等支援学校」(以下「たまがわ」)を取材した。「たまがわ」は、就職に強い特別支援学校として知られ、就職率は、ここ5年の平均で87.2%。特別支援学校高等部の平均はおおむね2割程度だから、かなり高い数字だ。1年後の定着率はここ数年で平均88%超、3年後で8割前後を維持している(学校把握分)。

 東野裕治校長のインタビューから見えてくる、特別支援教育のメリットとデメリット。そして、今の日本の特別支援教育の現場で起きていること。国連の要請について考える一助にもなるのではないか。

「特別支援学校」になじみのない読者も多いと思います。どういう学校を指すのでしょうか。

東野裕治氏(以下、東野):もしかすると「養護学校」といったほうが通じるかもしれません。

確かに、障害のある子どもが通う学校といえば、昔は「養護学校」だった気がします。

東野:「養護学校」が、2007年、「特別支援学校」に変わったのです。「たまがわ高等支援学校」(以下「たまがわ」)ができたのはその1年前でしたが、先取りして「高等支援学校」としてスタートしました。

 正式名称は「特別支援学校」で、「学校教育法」という法律で定義されています。でも、大阪では「支援学校」です。お上は「特別支援」というけれど、「支援に特別はない!」ということだと思います。大阪らしいという気がします。

なるほど。「養護学校」が「特別支援学校」に名前を変えたのですね。

東野:名前だけでなく、考え方も変わりました。障害のある子を「養護」し、「保護」するのではなく、子どものいいところを生かし、伸ばしていくための「支援」をしよう、という考え方に変わりました。それでイメージがよくなったのか、入学したいという子も増えているんです。

でも、誰でも入れるわけではないんですよね?

東野裕治(ひがしの・ゆうじ)
東野裕治(ひがしの・ゆうじ)
大阪府立たまがわ高等支援学校校長。1962年生まれ、大阪府出身。大阪教育大学を卒業後、大阪府内の中学校で数学教師を14年間務めた後、大阪府立の特別支援学校へ転勤。肢体不自由と知的障害の特別支援学校をともに経験。大阪府教育委員会(現:大阪府教育庁)で首席指導主事、参事を務めた。府立支援学校の4校で校長職を務める(現在4校目)。(写真:大亀京助)

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