「発達障害のリアル」を模索する本連載。引き続き「発達性読み書き障害」について。筑波大学元教授で、NPO法人LD・Dyslexiaセンター理事長の宇野彰氏に話を聞く。
知能に問題がないとしても、読み書きに著しい困難を覚える発達性読み書き障害は、日本人の7~8%が該当するという。それだけの数の子どもに読み書きの障害が明らかになり、学校の教育も変わりつつある。高校の入学試験で試験時間を延長するといった配慮もなされるようになった。そもそも板書を写すのは、なんのためなのか? 発達障害の子どもたちの存在は、教育の本質を問い直すきっかけにもなる。
発達性読み書き障害について、これまでに宇野先生からうかがったお話は、下記となります。
(1)読み書きが苦手な「発達障害」はクラスに3人 知能と違う課題
(2)「読み書き」が苦手な発達障害 問題は「聞く脳」にあるかも?
(3)発達障害と読み書き なぜ「小学1年生の夏」が大事なのか?
発達性読み書き障害がある子どもが苦労することの1つに、板書があります。息子も、タブレットの持ち込みが許可されるまでは、板書を写すだけでエネルギーを使い切ってしまい、肝心の授業の内容がまったく頭に入ってこなかったようです。
宇野彰氏(以下、宇野):僕は、そもそも板書って必要なのかと疑問に思っているんですよ。オンライン授業になった途端、板書しなくなった先生もたくさんいますよね。板書したものをノートに写させることにどんな意味があるのでしょうか。「手で書いたほうが覚える」と言う人がいますが、1回、板書を写しただけで覚えますかと。大事なポイントを伝えるのであれば、資料を渡せばいいと思います。大事なところは文字を大きくしたり、アンダーラインを引いたりすればいい。ルビを振っておくこともできますしね。板書より工夫しやすいんじゃないでしょうか。

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