「発達障害のリアル」を模索する本連載。引き続き「発達性読み書き障害」について、筑波大学元教授で、NPO法人LD・Dyslexiaセンター理事長の宇野彰氏に話を聞く。

 知能に問題がないとしても、読み書きに著しい困難を覚える発達性読み書き障害。診断を受けていないと「真面目に勉強していない」「頑張っていない」などと責められ、苦しむことになる。どうしたら、苦手なりに文字を習得していけるのか。どうしたら、保護者や先生、周囲の人たちが気づき、支援につなげることができるのか。

 発達性読み書き障害について、これまでに宇野先生からうかがったお話は、下記となります。

(1)読み書きが苦手な「発達障害」はクラスに3人 知能と違う課題
(2)「読み書き」が苦手な発達障害 問題は「聞く脳」にあるかも?

先生のお話をうかがって、発達性読み書き障害の子どもが想像以上に多いことに驚きました。ひらがなやカタカナが読めない子が2〜3%、漢字が読めない子が6.9%。「読むスピードが遅い」というケースも含めると、7~8%いるということでしたね。1クラス40人ならば、クラスに3人くらいはいる計算です。でも、そのわりには、発達性読み書き障害の話をあまり聞かない気がします。

宇野彰氏(以下、宇野):客観的な調査をしていなかったからだと思います。「知能が十分高くても、文字の習得ができない子がいる」ということを前提とした基礎的な調査が、これまで日本でされてきませんでした。

ということは、昔からあった障害なのですね。

宇野:そう思います。この研究を始めてからドラマや映画を見ていて「私、小学校も行ってないからひらがな読めないのよ」なんていうセリフに出合うと、違和感を覚えます。そんなことはあり得ないんです。

それはつまり、小学校に行っていなくても、ひらがなは読めるようになるということですか?

宇野:多分、なります。

宇野彰(うの あきら)
筑波大学元教授、発達性ディスレクシア研究会理事長、NPO法人LD・Dyslexiaセンター理事長。医学博士。言語聴覚士。読み書きが困難な子どもたちの指導をするかたわら、指導ができる先生を増やすために尽力。「改訂版 標準読み書きスクリーニング検査 ー STRAW-R」を開発。著書に『標準読み書きスクリーニング検査―正確性と流暢性の評価』(共著、インテルナ出版)『ことばとこころの発達と障害』(永井書店)、『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』(ポプラ社)などがある。(写真:的野弘路)

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