「発達障害のリアル」を模索する本連載。今回は「発達性読み書き障害」について。

 発達性読み書き障害は、知能に問題がないとしても、読み書きに著しい困難を覚える障害。日本人の7~8%が該当し、40人のクラスならば3人程度はいるという身近な存在だ。いわゆる「学習障害」の中核であり、この連載を取材、執筆する私(黒坂真由子)の息子にもこの障害がある。

 取材したのは、宇野彰氏。筑波大学元教授で、現在はNPO法人LD・Dyslexiaセンター理事長として、発達性読み書き障害の子どもたちの支援などを手掛ける。コミックエッセー『うちの子は字が書けない 発達性読み書き障害の息子がいます』(千葉リョウコ作/ポプラ社)の監修なども手掛けた、この分野の専門家だ。

 発達性読み書き障害は、個人差が大きい。正しく理解するためにまず、「なぜ読めないのか」「なぜ書けないのか」のメカニズムを教わった。

「学習障害」を、宇野先生の言葉で、できるかぎりやさしくご説明いただくとすれば、どのようなものになるでしょうか?

宇野彰氏(以下、宇野):学習障害は、知能が正常だとしても、学校の勉強に関連する能力に困難があることをいいます。医学の世界と教育の世界では定義が少し違いますが、共通する部分を取り上げると、次の4つの能力のうちのいずれか、あるいはいくつかに困難があるのが学習障害です。

(1) 文字を読む
(2) 文字を書く
(3) 計算する
(4) 推論する

宇野:このなかでも、「(1)文字を読む」ことや、「(2)文字を書く」ことに困難があるケースを、「発達性読み書き障害」と呼び、これが学習障害の中核です。

「学習障害の中核」というのは、どういうことでしょうか?

宇野彰(うの あきら)
筑波大学元教授、発達性ディスレクシア研究会理事長、NPO法人LD・Dyslexiaセンター理事長。医学博士。言語聴覚士。読み書きが困難な子どもたちの指導をするかたわら、指導ができる先生を増やすために尽力。「改訂版 標準読み書きスクリーニング検査 ー STRAW-R」を開発。著書に『標準読み書きスクリーニング検査―正確性と流暢性の評価』(共著、インテルナ出版)『ことばとこころの発達と障害』(永井書店)、『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』(ポプラ社)などがある。(写真:的野弘路)

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