「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。
発達障害に対応するとき、直視せざるを得ないのが、知的障害の有無だ。
「発達障害に知的障害が伴うかどうかで、生じる課題や対応策は違ってくる」。こう指摘するのは、立命館大学教授で医学博士、臨床心理士でもある宮口幸治氏。『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち』(ともに新潮新書)などの著作でも知られる。
『ケーキの切れない非行少年たち』は、発達障害の問題を取り上げた本として読まれることも多いが、この本で宮口氏が本当に問題視しているのは「気づかれない境界知能と軽度知的障害」なのだという。
発達障害と知的障害は、どのような関係にあるのか。知的障害があるかどうかで、発達障害への対応はどう変わるのか。見過ごされやすいという「境界知能」と「軽度知的障害」の問題と絡めて尋ねた。
先生は著書『ケーキの切れない非行少年たち』で、発達障害や知的障害のある子どもたちの存在について、社会に問題を投げかけておられます。
宮口幸治氏(以下、宮口氏):いえ、それが違うのです。誤解している方が多いのですが、あの本で私が問題にしているのは「発達障害」というより、「気づかれない境界知能と軽度知的障害」なのです。
そうだったのですか。では、先生が問題とされている「気づかれない境界知能と軽度知的障害」とは何でしょうか。定義から教えていただけますか?
宮口:まず「知的障害」の定義を確認しましょう。

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