「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。

 発達障害がある人にとって働きやすい会社とは、どんな会社か。どうしたら、働きやすい会社に出合い、就職することができるのか。発達障害に特化した就労支援事業を手掛けるKaien(かいえん/東京・新宿)代表の鈴木慶太さんに尋ねる(前回は、「なぜ『発達障害で障害者手帳を取ることに損はない』のか?」)。鈴木さんもまた、長男が発達障害の診断を受けていて、それが起業のきっかけとなった。

 発達障害がある人にとって「自分に絶対に向いていない仕事」を知ることはとても重要なのに、それが難しいのだと、鈴木さんは話す。意外に相性がいいのは外資企系業だというのはなぜか。

この連載のインタビューでこれまで、「自分には発達障害があると分かっていたのに、発達障害者にはまったく合わない仕事に就いてしまって……」というお話をいくつか聞いてきました。例えば、看護師になったケース(「発達障害の漫画家『発達障害と診断されるだけでは何も解決しない』」)や、銀行員になったケース(「借金玉さん、なぜ高校を中退した発達障害児の成績が上がるのか?」)。いずれも大変な苦労を味わった末に、仕事を変えられました。なぜそういったことが起こってしまうのでしょうか? 

鈴木慶太氏(以下、鈴木):それこそがまさに、発達障害なんですよ。

自分に合わない職場に飛び込んでしまうことが、ですか?

鈴木:はい。「自分が何者か分からない」というのが、私が考える発達障害の一番のキモです。逆に自分の特性を理解して立ち位置を決められる人は、発達障害の傾向があってもそんなに困ることはありません。

だからこそ、鈴木さんがKaienでされてるような就労支援、第三者として本人の特性を見極めて会社とつなげていくという支援が必要になるんですね。

鈴木:ただ、いくらカウンセリングしても、なかなか伝わらないんです。どんなに共感しても傾聴しても、本人が自覚するまでには、なかなか至らない。

鈴木慶太(すずき けいた)
鈴木慶太(すずき けいた)
長男が発達障害の診断を受けたことをきっかけに、発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。元NHKアナウンサー。東京大学経済学部卒業(00年)、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(09年・MBA取得)。日本精神神経学会・日本LD学会での登壇や、文科省の「障害のある学生の修学支援に関する検討会」委員を務める。Kaienでは、企業向けの人材紹介、大人向けの就労移行支援事業、学生向け・子ども向けのプログラムに加え、啓発事業も行う。『親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方』(河出書房新社)など著書多数。

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