給料の違いは、残業代だけ

鈴木:発達障害では、同じパフォーマンスであればどちらの雇用でも給料は変わりません。同じ職場で一般雇用と障害者雇用の人たちが同じ仕事をしていることは多々ありますが、皆さん、同じお給料をもらっています。ただし、障害者雇用では基本的に残業はしないので、差が出るとすれば、残業代の部分です。

障害者雇用には、どういう仕事があるのでしょうか?

鈴木:事務補助か軽作業が多いですね。この2つで8割くらいを占めます。お給料は月に18万~19万円。20万円に届かないことが多いです。

それは障害者雇用だからというのではなく、その職種の平均的な金額ということですね。

鈴木:そうです。ですから一般雇用で同じ仕事をしても、同じお給料です。障害者雇用の給与が低いと感じられるとすれば、障害者雇用だからではなく、仕事の内容によるものです。

待遇はいかがでしょうか? 障害者雇用では基本的に残業がないという話が先ほどありましたが、例えば、体調が悪いときに休みやすいとか、長期の休みが取りやすいといったことはあるのでしょうか。

鈴木:いろいろな配慮はあります。ただこれは、障害者雇用だけのものではなくなっています。2016年に施行された「障害者差別解消法(*)」の中に「合理的配慮(*)」という概念が組み込まれました。簡単にいえば、障害がある人から、「障害に対する配慮をしてください」という要求があった場合に、合理的理由がない限りはノーと言ってはいけない、というものです。

誰であっても、障害者手帳のあるなしにかかわらず、ということですか。

鈴木:そうです。ですから、いわゆる障害者雇用で働いていると、障害者雇用促進法で担保されている合理的配慮のさらに下に、すべての障害者に認められる障害者差別解消法の合理的配慮があるという、「二重の配慮」が受けられるようになっています。二重という言い方が正しいか分かりませんが、法律的にはそうなっているということです。

そういった意味では、一般雇用でも、手帳がなくても、合理的配慮を求めることはできるということですね。

鈴木:できます。そういう意味では、一般雇用も障害者雇用もあまり変わらないのですが、障害者雇用であれば「合理的配慮を求める」というアクションを起こさなくても、いろいろなメリットが自動的に付与される形になります。

なるほど。配慮というのは、その人の特性に合った配慮を求めることができるということですか?

鈴木:はい。合理的配慮というのは、それぞれの求めにオーダーメードで対応しましょうというものです。そこは、一般雇用でも障害者雇用でも基本的に変わりません。

 ただ現実には、会社によって「受けやすい配慮」に違いがあります。そこは外から見ていても、あまり分からない。このような「情報の非対称性」が、障害者雇用の配慮における問題となっています。その情報の仲立ちをする人が必要です。

鈴木さんが行っているのが、まさにそこ、というわけですよね。

鈴木:それに加えて、本人が「自分はこういうことが苦手で、こういう配慮をしてもらいたい」ということを知っておく必要がある。その部分の情報の整理が必要です。「セルフアドボカシー(自己権利擁護)」(*)といわれるものです。

 自分の障害を受け止め、自分の強みを生かすために、どんな配慮が必要か。そのためにどのように環境の調整が必要か。それを説明できるようになっておく。自分で交渉できるようになっておくということが、実は今の法律の下では、とても重要なのです。

よりよく働くために、自分を知り、説明できるようになっておく。それが就職のための大切な準備になるのですね。

*障害者差別解消法:障害を理由とする差別の解消を推進する法律。障害者への合理的配慮の提供を行政機関や企業に求めている。
*合理的配慮:障害者からの求めに応じて、可能な限り社会的障壁を取り除くこと。
*セルフアドボカシー:自己権利擁護。障害や困難のある本人が、利益や欲求、意思、権利を自ら主張すること。

(次回に続く)

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