障害者手帳にまつわる「都市伝説」

障害者手帳は、知能指数(IQ)が普通以上でも受け取れるのでしょうか?

鈴木:障害者手帳には3種類あります。次の3つです。

・ 「身体障害者手帳」
・ 「療育手帳」
・ 「精神障害者保健福祉手帳(以下、精神の手帳)」

 発達障害の方が該当するのは、基本的には3番目の「精神の手帳」です。この手帳を取得できるかどうかは「精神障害があるかないか」で決められ、その精神障害には発達障害も含まれています。

だから、発達障害の人が取得できると。IQは関係ないんですか? IQが高くても障害者手帳を受け取れるんですね。

鈴木:もちろんです。療育手帳にはIQの条件がありますが、精神の手帳にはありません。この3種類ある障害者手帳ですが、雇用の現場で受けられるメリットは基本的に変わりません。

そうなると知的障害と発達障害の両方がある人は、どちらで取るかの判断になるのでしょうか? 

鈴木:そうですね。どちらかで取る方もいますし、どちらも取る方もいます。

手帳を取得する条件は、住んでいる都道府県などで変わるものですか?

鈴木:微妙なところで、もちろん同じ法律の下で国が発行しているので基本的には同じなのですが、自治体レベルで運用が分かれるところもあります。例えば「あの県では発達障害で療育手帳が取りやすい」だとか、若干の違いはあります。

発達障害では手帳は取れない、といった話を聞いたりするのですが。

鈴木:そんなことはありません。精神の手帳が対象とするのは「精神障害」のため「長期にわたり日常生活や社会生活への制約がある」人です。発達障害に起因する社会的制約があることを、医師にきちんと伝えて診断書をもらえば、確実に手帳は取得できます。

 このあたりは誤解が残っている部分で、昔は発達障害で手帳が取れない人が実際にいたのです。しかし今は、行政も取得できると明確に言っていますので、安心していただいていいと思います。

 「手帳が取れないんです」という相談を受けることはよくあるのですが、ほとんどの場合、取れるはずなのに「取れない」という話をうのみにしているだけです。話を聞いてみると申請してもいない。

いろんな相談を受けていらっしゃるのですね。

鈴木:ほかにも「うちの子はグレー(発達障害の傾向があるが、はっきりと診断されないケース)ですから、手帳は取れないんですよね。どうしたらいいですか?」と質問されて、「お子さんに知的障害がないから療育手帳は取れませんが、精神の手帳は取れますよ」と答えるといったやりとりは多いです。

 発達障害には知的障害がないケースが多くて、その場合、精神の手帳が取れるか取れないかという話になります。そして精神の手帳を取るには、社会的な制約があるかどうかが判断の分かれ目になります。例えば、親と一緒に暮らしている学生のうちは、発達障害があっても、社会的制約があるかといえば、あまりないかもしれません。しかし、社会に出て働き出すと、制約を感じるようになる。そんなふうに環境が変わると文脈が変わり、手帳が取れるようになることもあるのです。

一般雇用と障害者雇用、どちらのほうが給料は高い?

一般雇用と障害者雇用では、待遇や給与はどう変わりますか。

鈴木:そうですね。これも「都市伝説」に近いのですが。

ではまず、「都市伝説」を教えてください。

鈴木:「一般雇用のほうが、障害者雇用より給料が高い」というものです。

それが都市伝説。ということは、実は障害者雇用のほうが給料は高いと?

一般雇用と障害者雇用では、どちらのほうが給料は高いのだろうか(写真:PIXTA)
一般雇用と障害者雇用では、どちらのほうが給料は高いのだろうか(写真:PIXTA)

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